やまがた子育て・介護応援いきいき企業
第52回 社会福祉法人 恵泉会

従業員数(2016年9月現在)
女性264名 男性76名(合計340名)

社会福祉法人恵泉会(理事長 櫻井好和)は、「こんこんと湧き出る泉のように恵みを与える」という願いのもとに名付けられ、昭和55年「障害者支援施設鶴岡市立愛光園」の運営を鶴岡市より受託したのを機に事業を開始し、現在では鶴岡市内で23の施設・事業所を運営している。設立当時の障害者・障害児福祉事業からその後、老人福祉や保育事業も展開し、総合的な福祉サービスを提供している。

◎「山形いきいき子育て応援企業」認定について

優秀(ダイヤモンド)企業  認定 平成28年7月29日

◎法人の理念

「熱意、誠意、創意」を法人の基本姿勢として、利用者に満足していただける良質な福祉サービスを提供することに努め、地域に愛され、信頼される事業体として地域の福祉の向上に貢献することを目指します。

【常務理事 法人事務局長  後藤 重好さん】

◎女性がいきいきと働き続けられる環境を目指して

社会福祉法人恵泉会は、平成28年7月に山形いきいき子育て応援企業「優秀(ダイヤモンド)企業」の認定を受けている。
元々女性の多い職場ではあるが、女性の管理職は16名のうち6名で約38%、役職社員は34名のうち27名で約79%と、いずれも認定基準(管理職15%以上、役職25%以上)を大きく上回っている。活躍する女性の多い、恵泉会の常務理事で法人事務局長でもある後藤重好さんに、女性が働きやすい職場づくりの取組みについて聞いた。
「今は、介護や保育の現場での人材不足が大きな課題となっていますが、職員にはできるだけ働き続けて欲しいと思っています。
当法人は約8割が女性の職場ですが、体力的には大変きつい仕事です。そのため、女性が働き続けられる職場づくりについては特に積極的に取り組んでいます。
以前、職員から子育てが大変で、フルタイムで働くのは難しいため、仕事を辞めるかパートタイムに変更したいとの相談がありました。私たちとしては、仕事を辞めてしまうことはもちろん避けたいと考えていますが、パートタイムも、正社員に比べると賃金等の条件が落ちますので、パートタイムへの移行もできるだけ避けたいと思っています。そのため、こうした相談があれば、どんな働き方が良いかなどについてじっくりと話を聞き、可能な場合は育児短時間勤務制度の利用を勧めています。育児短時間勤務制度は、法定では子どもが3歳まで利用できることとされていますが、当法人では、小学校就学前まで利用可能としています。実際に、子どもが3歳になってからも、まだ育児短時間勤務を続けたいという職員が多くいます。現在、4人の職員が育児短時間勤務を利用し、そのうち2人が3歳以上の子どもの育児のため利用しています。この制度の活用によって、これから子育てをする職員も仕事と家庭を両立し、頑張ってもらえるのではないかと思っています。そのためにも私達役員は、可能な限り職員の希望に応え、より働きやすい職場づくりをしようと常に考えています。法律は最低ラインでありますが、そこから職員の意見をどう制度に反映するかが大事だと思っています。『よりよい制度にするためにやれることは何でもやりましょう』という思いで、今後もより働きやすい職場づくりを目指していきたいと思っています。」

◎『事業所内保育所 鈴の音保育園』の設立

「当法人では、今年4月に『事業所内保育所 鈴の音保育園』を開所しました。事業所内保育所を設置したのは、当法人が受託運営している慶応義塾大学先端生命科学研究所の事業所内保育所での出来事に影響を受けたことがきっかけです。この保育所では、研究所の職員の方が、働きながら子どもを母乳で育てておられて、非常に感銘を受け、当法人の『特別養護老人ホーム永寿荘』にも事業所内保育所を設置したいと思いました。保育所の設置場所については、職員にアンケート調査を行い、何度も検討を重ねました。最終的には、地域の方の御協力で、建物を寄贈いただき、事業所内保育所を設置することができました。建物はもともと写真館でしたので、写真館の名称『鈴木写真館』から一字を取って『鈴の音保育園』と名づけました。入園の対象は0歳、1歳、2歳のお子さんです。定員は12名とし、地域福祉向上の観点から職員だけでなく、地域の方へも開放しています。保育者として5名を配置し、うち1名は看護師です。当法人は社会福祉法人ですので、福祉の面では特に貢献していきたい、また、職員のための保育所であることを大切にしたい、という思いから利用料は市が定める保育料の半額としています。この事業所内保育所は、当法人にとって地域に誇れる1つの要素だと思っています。」

【鈴の音保育園】
【園内の様子】

◎ワーク・ライフ・バランス(仕事と家庭の両立)の推進について

ワーク・ライフ・バランスをより支援するための取組みについて聞いた。
「現在は、年次有給休暇の取得率向上を目標に取り組んでいます。今は、社会的にも有給休暇を取得しようと言われますが、職員はなかなか休みをとらないものです。昨年、『永寿荘』では『3連休をつくりましょう』と職員へ働きかけました。当法人が運営する『鶴岡市立松原保育園』では、『自分や家族の誕生日は休日にしましょう』と呼びかけています。誕生日はみなさん順番に回ってくるものなので、お互い様の精神で、ぎくしゃくすることなく、年次有給休暇を取得しています。これらの取組みにより、少しずつではありますが、休暇取得率が上がってきています。

◎職員のキャリアアップ支援について

「当法人には、正職員の他に、准職員と契約職員がありますが、平成19年から、正職員登用制度を設けています。仕事でも、頑張ってステップアップしたいという意欲のある方には、やりがいを持って働いていただきたいと思っています。この制度で、今年度から8人の方が正職員となりました。
また、職員の自己研鑽のための自主研修を支援する自主研修助成制度を設けています。個人では最大10,000円、グループには最大30,000円の助成金を支給しています。自主研修とは、職員や職員で構成するグループの自主的な学習や研修・研究で、例えば、講演会の参加費や、職員同士で勉強会を開催する場合の講師謝金の助成等を想定しています。自分の担当する職務とは直接は関係しない分野であっても広く対象としています。個人では、平成26年に16名、平成27年に11名が利用し、職員の資質向上につながっています。

【老人施設介護職員 佐藤 由美さん】

◎育児短時間勤務により仕事と家庭の両立が可能に

「永寿荘」で働く佐藤由美さんは、平成12年に採用され、勤続16年目。夫と、小学生の双子の女の子と保育園に通う3歳の男の子の5人家族である。現在、佐藤さんは育児短時間勤務制度を活用し、8時30分から15時30分までの6時間勤務を行なっている。佐藤さんは介護職員として勤務しており、利用者の食事介助やおむつ交換、利用者との折り紙やおやつ作りなどのレクリエーションなどを担当している。
「『永寿荘』に勤めている間に3人の子どもを出産しましたが、3人を育てることはとても大変でした。そのため、3人目の子どもの育児休業の間、度々、上司に今後について相談させていただきました。復職後、夜間勤務や遅番、早番をしながら子どもを育てていく自信がなかったので、退職させていただくかパート勤務に変更して欲しいと話をしました。しかし、当時の荘長には、『育児短時間勤務など、制度を活用しながら何とか仕事を続けてみないか。』『それでも大変だったらまた一緒に考えよう。』と温かいお言葉をいただきました。育児短時間勤務制度は子どもが小学校就学前まで使えますので、この制度を活用し、何とか頑張ってみようと決意しました。今は、小学校への見送りをしてから出勤し、終業後は下の子の保育園にも迎えに行くことができます。特に私の場合は自宅が酒田で、通勤にも時間がかかりますので、大変助かっています。双子がまだ小さい頃は、夜間勤務もありましたので、なかなか子どもの面倒を見れませんでしたが、今は主人と協力しながら家事、育児を分担しています。朝は、主人が子どもを保育園まで送り、夜は一方が洗濯、食器洗いをしていれば、一方が子どもを寝かしつける等協力しています。育児短時間勤務を使うのは、自分が初めてだったため、初めは周りの方の反応が気になりましたが、職場のみなさんには協力いただき、大変感謝しています。子どもが小学校に入るまではこの制度を活用し、仕事も家庭も両立していきたいと思います。」

【事務職員 細谷 庸子さん】

◎介護休暇により母を介護

「永寿荘」で事務職員として働く細谷庸子さんは、平成24年10月に採用され、今年の10月で4年目を迎える。窓口業務や利用者の手続きのお手伝い、職員の研修などの事務を行っている。家族は、単身赴任中の夫と中学生の子ども、80代の母の4人家族。介護状態にある母の介護のため、現在は介護休暇を取得しながら働いている。
「母は私が『永寿荘』に勤め始めた頃は、まだ介護は必要ではありませんでした。しかし、高齢で、入退院を繰り返すうちに、一人で自宅に置いておけなくなりました。通院には介護サービスを利用していたのですが、要介護3になってからは家族の援助が必要となりました。母の通院には、時間単位の年次有給休暇をいただいて対応していましたが、子どもの学校行事等にも年次有給休暇を取っていたので、だんだん休みが足りなくなってきました。そこで、上司に相談し、介護休暇を利用させていただくこととなりました。介護休暇は年5日間取得でき、時間単位の取得も可能です。母は病院では車椅子を利用しますし、お医者様から説明を受ける時には一人では心許ない状態です。そのため、私が母の通院に付き添うと、母も安心感があるようです。単身赴任をしている主人も安心してくれています。中学生の娘も介護に協力的です。
昨年は母の入退院が多かったため、早い段階で介護休暇を消化してしまったのですが、今は要介護度が2に改善しました。職場のみなさんからは、『必要な時は心配しないで休んでいいよ』と声を掛けていただいていますので、とても感謝しています。」
最後に、細谷さんから後輩職員へのメッセージをいただいた。
「私は母の介護と中学生の娘の子育てがありますが、他の職員の方も、子育てが終わらないうちに、育児と介護を両立しなければならない場合があるかもしれません。私は制度を活用しながらこうして働き続けられているので、他の職員の方にも、大変な時は無理せず、制度を活用するなどして働き続けてほしいと思います。」

 
2016年11月1日