女性にやさしい職場環境のススメ 県内事業所の取り組み
女性社員に喜んでもらえる職場環境を追求したら「えるぼし認定」に!

株式会社パルコモード(米沢市)

代表取締役
山本 美樹子 氏
<会社概要>
〒992-0054米沢市城西4丁目4番21号
電 話:0238-23-8201
資本金:5,000万円
設 立:1974年8月
社員数:128名(男15名 女113名) R3.7.30現在

会社の概要について教えてください

弊社は1974年設立、今期で48期目を迎えています。私の父今井三男が初代社長で、私が二代目に就任して5年目となりました。スカートやパンツをボトムというのですが、婦人服の高級ボトムを主に作っている工場になります。
コロナ禍において、百貨店が営業停止しアパレルメーカーさんのお仕事が止まってしまう状況だったので、昨年は当社を含め多くの縫製工場さんがマスクや医療用ガウンの生産をしました。最初は苦労しましたが、そこは今までの経験を生かして、やり方をいろいろと工夫しながら軌道に乗せていきました。メンズのパンツや、襟なしのワンピースの製作も始めました。現在はボトム生産中心に戻り、100%アパレルメーカーさんからのお仕事で忙しくさせていただいています。

弊社の特色としては立ちミシンがあります。ミシンは座ってではなく、立って操作します。弊社の縫製ラインは6人1チームで、1番目の人から6番目の人に流れれば一着完成する、というシステムになっています。一人でミシン、アイロン、特殊ミシンの多能工をしなくてはならないので、立っていないとスムーズにできません。
立ちミシンは、動きやすく、それでいて意外に腰痛になりにくいんです。またもう一つのよい点として、おなかの大きい妊婦さんも圧迫感がなく、楽に作業がしやすい、ということがあります。産休に入ったら一週間後に生まれました、といったこともありました。

1984年12月から独自でこの方式を始めましたが、非常によいシステムだと自負しています。現在では業界全体の4割ぐらいが立ちミシンを採用しているのではないでしょうか。

認定職業訓練施設※「パルコモードファッションスクール」は他にない取組みですね

認定職業訓練施設「パルコモードファッションスクール」を1991年に開校し、今年でちょうど30年になります。企業内訓練校があり、職業訓練指導員が4名在籍し、入社後に未経験者は基礎からしっかりと学ぶ事ができ、経験者はより専門性を高めていく事ができます。

特に力を入れているコースの1つは国家資格2級技能士コースです。入社3年目から受ける事ができ、在籍している資格保有者は62名です。最近は間接ポジションからの志願者も多く、現在6名が1月の検定に向け勉強しています。受講者のうちの1名は新卒入社3年目なのですが、2級、1級、指導員の資格まで最短で取りたい!との目標を持ち意欲的に取り組んでいます。技能士資格取得は会社の財産であるという思いから、取得者の氏名を一覧にして掲示しています。
受講者にとっては自分の能力を向上させるための勉強の時間といっても、能力が上がれば会社の生産性と品質も上がりますし、ご家族の協力を得てやっている部分ですから、残業代とまではいかないですが奨学金や合格祝金を支給し、全面的にバックアップしています。今年度は16コースを開催予定です。

弊社では外国人技能研修生・実習生を受け入れて30年近くになります。中国から来た第1期生のうちの1人が、今は受け入れ窓口である監理団体の理事長となり、弊社のシステムを十分理解し指導してくれています。スクールでの指導のノウハウが技能実習にも生かされています。
高校の新卒入社の方からは、スクールがあるから安心して応募した、という声も多いですし、弊社としてもこういったところをアピールして、現在の人員不足の解消につなげていきたいと思っています。

※認定職業訓練・・・事業主や職業訓練法人等の行う職業訓練の教科、訓練期間、設備等が厚生労働省令で定める基準に適合するものであるとの認定を受けて実施される職業訓練

えるぼし(★★★)※に認定されていますが、会社としてどのような取組みをしていますか?

特別なことをやっているつもりはないんです。通常我々が取り組んでいることが「えるぼし」に合っていたので、会社だけでなく地域でも認めてもらえるような形に持っていきたいという話をご担当の方と相談して申請、取得に至りました。

この地域は、以前から子どもをおじいちゃんおばあちゃんに預けて見てもらい、女性が共働きで働ける環境が整っていたんですね。当社では男女比で9割が女性であり、活躍してもらっている中でより一層、喜んでもらえる働きやすい環境とは、と考えたとき、こういうことをやっている会社ですよというアピールをしていく必要があると考えました。
そうした中、社長になってから誕生月の社員全員と毎月個別面談をする機会を設け、私に直接自由に言いたいことや悩みなど、何でも話してもらいました。これは3年ほど続け、面談後にお誕生日プレゼントとしてお花を贈りました。

このほか、健康経営にも力を入れています。社員が健康を維持するためにはどうしたらよいかということを常に考え、毎朝のラジオ体操、米沢栄養大学と米沢市とコラボしての減塩運動、ヨガクラスの開催、社員へのアンケートなどを実施しています。
こうした取組みの中えるぼし制度について知り、内容を見たらこれまで弊社が取り組んできたこととだいたい合致していた、ということなんです。

※えるぼし・・・女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定制度で、一定の基準を満たし、女性活躍推進に関する状況などが優良な企業に発行される認定マーク

産休、育休など子育て支援で取り組んでいることはありますか?

子育て支援としての手当支給はありませんが、お蔭様で平均勤続年数が20年なんですよ。40年以上勤めてもらっている社員や、独身時代に入社して結婚、出産、子育てを終え、お子さんが成人し孫もいる、という社員もたくさんいます。働く環境には気は配っていますが、その居心地の良さが勤続年数につながっているのかもしれません。
産前産後休暇、育児休暇取得率は100%。産休育休で1年以上、保育園の受け入れが決まらない方は、2年近く休まなければならない場合もあります。それでも育休から復帰するときは以前と同じポジションに戻ることを基本としているので、「会社に復帰できるかな?」といった心配をする社員はいないと思います。

現在3名が産休育休取得中ですが、同時に7名休んでいる時期もありました。第2、第3子の出産という方もいます。代替職員は置かずみんなでカバーしています。カバーする社員には、休んでいる人の工程を覚える機会なのだと話をして協力してもらっています。

社員との面談によって改善につながったことはありますか?

もう本当に言いやすいんでしょうね。いろんなことを言ってきます(笑)。まず一つはトイレを洋式にして欲しいという希望があり、一方で和式も残して欲しいという人もいたので、皆の希望に沿い、社長になった時に早速実行しました。

あとは、食堂のテレビのモニターも小さくて見づらいという声があったので65インチに大きくしましたし、トイレを変えた時も音消しを必ずつけてという声もあり、それは女性ならではの意見だなと思い導入しました。熱中症対策ということでウォーターサーバーも各所に設置しましたね。

また、社員駐車場について、敷地内にある他に社屋から徒歩5分程の土地に借りたところもあるのですが、そこを利用している社員から「私たちはいつまでも遠い駐車場のままなんでしょうか。」という意見があったので、2年交代のローテーションにして平等にしました。これは、社内に意見箱を設置している中に投書されたものです。社長就任後3年間は社員一人ひとりと面談していましたが、今は意見箱に投書するかたちを取っています。

女性ならではの細かい意見ですが、そういった一つ一つに対応していく事が、女性の社長である私のやり方です。

会社としてこれから取り組みたいことについて教えてください

生産性と品質を上げ、賃金をアップすることですね。女性が自立して生活できるようになれば一番いいと思っています。その結果が地域の活性化にもつながれば嬉しいです。

米沢市も企業を誘致していますが、誘致企業は賃金が高いじゃないですか。やはり自分たちの生活で、働きやすい環境よりも経済的な問題を優先に考えて移られる方がいて我々としてももったいないです。そのため賃金を上げるためには?ということを常に考えています。やはり経費を削減して利益を出すことですね。一人ひとりが力を出しあって努力し、良い結果と共に皆さんに還元したいですね。
あまり大きな声では言えないのですが(笑)、今期の決算で成績が良かったものですから、今日が利益賞与の支給日になっているんです。
<士気が上がりますね。>
頑張ったらみんなに還元されるんだよ、ということを常に言っています。会社も社員もみんなで頑張りましょうということですね(笑)。

取材:令和3年7月