社労士コラム

まずは『アンコンシャス・バイアス』に気付くことから始めましょう

特定社会保険労務士
早坂 久美子 氏
アンコンシャス・バイアスとは物事に対する偏った見方のことで、自分ではなかなか気づきにくく、そのため「無意識の偏見」と言われます。
このアンコンシャス・バイアスが知らず知らずのうちに私たちの家庭や職場の中で格差を生み出していることに気付かなければなりません。

突然ですが、以下の問いにYesかNoかで答えてみてください。
「リーダーや管理職になりたい女性は、男性に比べて少ないと思う」
「共働きで子どもが病気になった場合は、母親が休むべきだと思う」
「体力的にハードな仕事を女性に頼むのはかわいそうだと思う」
「パートタイマーは『主婦が家計補助のために働いている』というイメージがある」
「職場の雑用は女性が行うべきだと思う」
一つでもyesと答えた方は、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)の影響を受けているかもしれません。

アンコンシャス・バイアスとは、物事に対する偏った見方のことで、自分ではなかなか気づきにくく、そのため「無意識の偏見」と言われます。これは、その人その人の過去の経験や見聞きしたことが影響して培われてきたもので、個々人の物事の見方、解釈でもあります。

個人の見方や解釈ですので何が正しい、正しくないということはありませんが、このアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が知らず知らずのうちに私たちの家庭や職場の中で格差を生み出していることに気づかなければなりません。

内閣府の『令和3年度性別による無意識の思い込みに関する調査研究』によると、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」と思う(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計)男性は50.3%、女性は47.1%という結果が出ています。年代別にみて50代以上が多い傾向ではありますが、20代でも男性41.8%、女性38.3%とその割合は少なくありません。頭では「男女平等」とわかっていても、いまだに古い価値観に囚われているという結果になっています。「女性活躍推進」がなかなか進まないのは、社会にこうした根強い性別役割分業意識によるジェンダー・バイアスが蔓延していることも一因なのです。

例えば、上司が「○○さんは今お子さんが小さいから、この仕事を頼んだらかわいそう」とよかれと思って配慮したことだとしても、本人は子育てと両立しながら新しい仕事に挑戦してみたいと思っているかもしれません。

一見善意に見えるこのバイアスは、自分ではなかなか認識できません。こうしたバイアスが職場にあると、女性に割りふる仕事や配属先が限定され、男性と女性の処遇の格差につながっていきます。その結果、管理職を目指したいという女性のモチベーションが阻害されてしまうのです。実は男性よりも女性の方がより強いジェンダー・バイアスを持っているという調査結果もあり、有能な女性が自分で自分の限界を作ってしまい、自らキャリアの成長や機会を逃してしまうということも起こっているのです。

それでは、このバイアスを打ち破り、組織の女性活躍を推進するためにはどうしたらいいのでしょうか。そのためにまずは組織のトップ、上司が自身のアンコンシャス・バイアスに気づくことから始めてみてください。自分自身のバイアスに気づけば、意識や行動が変わります。社内で研修やワークショップを開催し、問題を共有したり、対応について意見交換したりするのもいいでしょう。上層部の意識や行動が変わることで、社内の従業員の意識や行動が変わり、お互いの相互理解が進んでいくと考えます。

女性が働きやすい職場は誰にとっても居心地がよく、公正な職場となります。一人一人がアンコンシャス・バイアスに気づき、相互理解を意識すれば、誰もが自分らしく働き、活躍できる組織づくりができると信じています。

※この内容は令和3年11月に公開されたものです。