基礎知識Q&A

就業規則の作成義務、どう判断する?

2025年6月26日

Q.
この度、従業員が増えたので就業規則を作成しなければならないと考えています。従業員が10人以上の場合は作成義務があるとされているようですが、具体的にはどのような場合に作成義務が発生しますか?

A.
就業規則の作成義務
就業規則は、企業の労務管理の基本となるルールブックです。原則として事業場単位で「常時10人以上の労働者」を使用している場合は、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。(労働基準法第89条)
「常時」使用する労働者とは、原則として、正社員・パートタイマー・契約社員など、雇用形態を問わず労働契約に基づいて使用されている全ての従業員が含まれます。例えば、正社員5人、パートタイマー5人の計10人であっても、就業規則の作成・届出義務が発生します。

作成時の注意点
就業規則の記載内容は、以下の3つに分類されます。

  1. 絶対的必要記載事項
    労働基準法で記載することが定められている項目(例:始業・終業時刻、休憩・休日・休暇、賃金、昇給、退職(解雇事由含む)など)
  2. 相対的必要記載事項
    会社として制度を定める場合には必ず記載が必要な項目(例:退職手当、賞与、臨時の手当、安全衛生、表彰・制裁など)
  3. 任意的記載事項
    上記以外で企業が定めるルール(例:副業の可否、服装規定など)

届出と周知
作成した就業規則は、労働組合や、労働者の過半数を代表する労働者の意見を聴取し労働基準監督署に届け出ることが必要であります。その後労働者に「周知=常時確認できる状態にすること」が重要です。例えば以下の方法があります。

  • PDF化して社内の共有サーバーなどに保管
  • 印刷して、掲示または事業所へ備え付け、または、配布

違反した場合
就業規則の作成・届出義務に違反した場合、労働基準監督署から是正勧告を受けることもあり、「30万円以下の罰金」が科される可能性があります。(労働基準法第120条)

就業規則を作成するメリット
従業員が10人未満の企業には作成・届出義務はありませんが、就業規則を作成することには以下のようなメリットがあります。

  • 明確なルールにより、従業員との間で誤解やトラブルが起きにくくなり、従業員のモチベーション向上や生産性の向上につながる。
  • 会社の理念や方針を就業規則に盛り込むことで、会社の目指す方向性が従業員に伝わりやすくなり、組織としての一体感を高める効果がある。
  • 懲戒処分などの対応を行う際に、根拠が明記されることで、適切な手続きが可能になる。
  • 就業規則の整備が要件となっている助成金への申請がスムーズになる。

このように、就業規則は単なる社内ルールではなく、従業員との信頼関係を築き、企業の健全な運営に繋がるための重要なツールです。たとえ義務がない場合でも、早めに整備しておくことが望ましいといえます。

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