社労士コラム

女性と男性のお給料の話(賃金格差)

特定社会保険労務士
二瓶 里恵 氏
男女雇用機会均等法が施行された昭和61(1986)年、15~64歳の女性の就業率は、53.1%でした。令和3(2021)年は71.3%となり、近年上昇傾向にあります。
しかし、厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、男女の月額賃金の差は8.3万円。年収にすると約100万円の差になります。

男女雇用機会均等法が施行された昭和61(1986)年、15~64歳の女性の就業率は、53.1%でした。令和3(2021)年は71.3%となり、近年上昇傾向にあります。
しかし、厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、男女の月額賃金の差は8.3万円。年収にすると約100万円の差になります。男性一般労働者の給与水準を100としたときの女性一般労働者の給与水準は75.2と、まだまだ格差が大きいのが現状です。

なぜ、女性と男性の賃金格差が起こるのでしょうか?
賃金の男女格差が生じるのは、
・女性は非正規雇用の割合が高い
・女性の管理職の数が少ない
・固定的な性別役割分担意識
・日本的雇用慣行
が、複雑に絡み合っていると思います。

女性は、出産・育児による離職、就業調整や家事・育児時間の確保を理由に自ら非正規雇用を希望する割合が高くなります。このことから、日本には、「男性は仕事、女性は家事」という性別役割分担意識が、根強く残っていることがうかがえます。
仕事と家庭の両立は、本当に大変です。家事・育児に、休日はありません。どちらも手を抜けないと頑張って無理してしまうことも、あるのではないでしょうか。
男性のみなさんも、家事・育児を手伝わなければならないとはわかっていても、なかなか実行できていないのではないでしょうか。

また、日本的雇用慣行として「メンバーシップ型雇用」があります。メンバーシップ型雇用は、社員ごとの年功や能力といった「人」が基準となります。この制度の場合、勤続年数と女性のライフプランとの間に不調和が生まれます。出産・育児で休職する可能性がある女性は、勤務年数が短くなり、出世のハードルは高くなります。
女性管理職(課長相当職以上)の割合は、全国平均9.4%、山形県内では7.9%(令和4年帝国データバンク)となっています。政府が目指す「30%」は、まだまだ遠い目標です。

賃金格差を解決するための対策としては、仕事に人をつける「ジョブ型雇用」を導入し、「人」ではなく「仕事」を基準にします。賃金はスキルや職種によって決定することで、男女や勤務年数に関係なく、業務レベルに応じて賃金が決まるため、女性で勤続年数が短くても、スキルが高ければ、高収入が得られるようになります。

最も重要なのは、性別の意識をなくすことです。性別の意識をなくしたとき、本来ほとんどの事柄は性別に関係なく、誰もが取り組めるはずです。
2022年4月に「育児・介護休業法」が改正されました。今後は、会社が社員の状況を把握し理解し、女性の時短勤務、男性の育休取得や長時間労働の防止を積極的に行い、男性の育児参加を推進することが必要です。男性が育児を担う時間を増やし、女性の家事・育児の時間を減らし、もっと仕事に集中できる家庭環境を整えることも大事なことだと思います。

女性だけに仕事と家事・育児の両立を求めず、男女格差のないジェンダーレスな働き方を推進するような社会が実現したとき、女性の正規雇用の選択や、キャリアアップによって収入が増え、男女の賃金格差が解消されるのではないでしょうか。

令和4年12月寄稿