お知らせ

労働者の解雇について

2020年7月1日

Q.
会社から、解雇理由証明書を付けて、1か月後の解雇を予告する解雇予告通知書を渡されました。解雇は有効なのですか?

A.
解雇には、主に①整理解雇、②懲戒解雇、③普通解雇の3種類があります。
①「整理解雇」…業績不振等のために、人員を減少させる必要がある場合の解雇
②「懲戒解雇」…会社や役職員の社会的な信用を失墜させる行為等を行った場合の懲罰的解雇
③「普通解雇」…本人のスキル不足や健康上の問題等又は②以外の理由での解雇

解雇の理由については、就業規則に記載されています。また就業規則を作成していない事業所であっても、解雇の理由は就職時に原則書面で交付されます。解雇は、これらに記載された解雇の理由を根拠として行われます。ただし、就業規則等の解雇理由に該当したからといってすぐに解雇が行われるわけではなく、社会一般的に解雇されても仕方がないと判断されるという蓋然性があって初めて、解雇は”妥当性”を有することになります。

解雇が有効か無効かを判断するのは裁判所です。しかし、裁判に訴えることは、判決まで数年かかるため、金銭的及び精神的、体力的、時間的な負担が非常に大きくなります。
また、解雇を受け入れた場合、次のような大きなデメリットがあります。
①再就職が困難になる可能性があります。
履歴書には「解雇により退職」と書くことになりますし、余程の理由がない限り、解雇された人材を採用する企業は少ないと考えられます。また、前の会社を退職した理由に虚偽があれば、再就職したとしても再度解雇されるリスクを抱えながら働くことになります。
②雇用保険については、基本手当(一般的に失業手当と言われているもの)について、給付制限がかかります。
原則解雇の原因が本人にある場合は、3カ月の給付制限がかかります。
③懲戒解雇となれば、退職金の全部又は一部が支給されないこともあります。
就業規則に、このように規定している場合が多いです。
④懲戒解雇となれば、解雇予告手当をもらえないことがあります。

では、解雇は避けたいが、裁判も良い方法ではないとすれば、どうすればいいでしょうか。
まずは、解雇を通告されて、何を望むのかを冷静に考えてみてはいかがでしょうか。どうしても会社に戻りたいのであれば、裁判に訴えることも一つの方法です。しかし、仮に無効判決を勝ち取ることができたとしても早くて数年後、しかも数年後に会社に戻っても、会社に居づらい可能性が高いでしょう。結果として、解雇と同様に会社を去ることになります。そうなると、解雇の有効・無効に拘る必要はないことになります。

解雇予告をしたけれど、長年会社のために働いてくれた従業員ですから、退職に応じてくれるなら退職勧奨の自己都合退職扱いに変更してくれることもあるでしょうし、退職金を上乗せしてくれたり、再就職先の世話をしてくれることもあるかもしれません。

解雇(予告)を言い渡されると、ついカッとなって、拘る必要のない解雇が有効か無効かといったことにばかりに目が向きがちです。しかし、冷静に現状を検討し、自分が何を求めるのか、何を守りたいのかを考えてみることが大切です。これがしっかり見えてくれば、次に向けたスタートも早く、しっかりと将来へ進むことができるのではないでしょうか。新型コロナウィルスの影響で、解雇のことで悩んでいる方も多いと思います。まずは冷静に現状を検討し、優先事項を整理して、前向きに今後の方向性を決めていただきたいと思います。

*解雇については、多くのルールが存在します。解雇をする側、される側ともに、専門家に相談するなど、適切に対応願います。