やまがた子育て・介護応援いきいき企業
第47回 株式会社髙田地研

従業員数(2015年11月現在)
女性10名 男性33名

◎「山形いきいき子育て応援企業」登録について

実践(ゴールド)企業登録 平成27年11月

◎経営理念

 我が社は、土と水の総合コンサルタントとして、社員一丸となって、企業の限りない向上と発展を期し、よりよい社会の創造に貢献する。
 一、技術開発によって、専門性を徹底追求する
 二、発注者の立場に立って、最高の仕事をなし遂げる
 三、社員と家族の生活向上と安定に全力投球する
 四、むりむだを排し、能率的にゆとりのある企業を進める
 五、企業人・社会人としての誇りをもって、誠意を尽くす

◎未来は大地の中にある

 1954年9月創業の寒河江市に本社を構える株式会社髙田地研。山形営業所(山形市)、福島営業所(福島県)、仙台営業所(宮城県)と、県内外3箇所に営業所を置き、地質・地盤調査や無散水融雪工事、温泉掘削工事、地すべり対策工事を主力として、これまで多くの信頼と実績を積み重ねてきた。現在、三代目の髙田誠社長は「弊社は、地球環境との調和を大切にしながら世界的規模で不足が懸念される水環境の保全、また社会問題でもある地下水汚染、土壌汚染に対する調査、浄化対策の推進、そして近年多発する自然災害に対しても、多くの地盤災害の問題に取り組んでいます。さらには、超高齢化社会に適した消融雪システムの開発を通じて、これからも安全・安心で快適な生活環境をご提案していきます」と語る。「~地球とコミュニケーション~私たちの生きる基盤であるこの“大地と水”から、最大の魅力を引き出し新しい価値を創造する!」をテーマに掲げ、地球や自然を相手に、未来に向けて奮闘する情熱のある企業だ。

◎現場で活躍する女性社員

 建設業の現場というと、男性が活躍する職場というイメージが強いが、髙田地研には男性社員と共に現場で活躍する女性社員がいる。勤続4年目の近野さんは、現在は技術部調査課に所属し、建築物や道路を建設する際の地質や土質の調査を行っている。この職業を選んだ動機について、「大学ではコンピュータのプログラミングを専攻していましたが、外で体を動かしたいと思ったこと、また、大学の教授からの紹介もあって土の性質を知ることに興味を持ったことがきっかけです」と近野さんは語る。さらに、男性の多い現場での大変なことについての問いに「現場で使用する機材が5~10キロと重いものが多い上、土質を調べるために現場から土を採取して、30キロ程度の土を運ぶこともあります。さらに、採取する場所の近くまで車で入ることができずに100メートルも土を運ぶ場合もあり、そういった時には大変苦労します。土を採取するのに1メートルほど穴を掘ることもあり、まさに体力勝負の現場で、男性社員との体力や筋力の差を感じることが多いです。他の男性社員に助けてもらうことも多く、申し訳ないと感じますが、それらをカバーするため、できるだけ早めの行動を心がけ、丁寧に仕事をするようにしていますね。また、自分から同僚に話かけるなどしながら、明るい、活気のある職場にしたいと思っています」

今後の働き方については、「これから先も今の職場で長く勤めたいと考えています。周囲の人と互いにカバーしながら連携して仕事を進めていくことによって、結婚や出産、育児を両立しながらでも頑張っていけるのではないかと思っています」と朗らかに答えた。

【技術部 調査課 近野 美紀さん】

◎女性の活躍推進~女性を積極的に管理職に登用している企業

 今年4月より総務部総務課の課長に昇進した黒田亜矢子さんは、髙田地研で初の女性管理職である。同部署で係長として5年間勤務し、総務のほかにも営業事務や調査等広く経験してきており、様々な部署の動きを全て把握している存在だ。管理職として働くにあたり、心がけていることを訊ねると「課長職に任命されたとき、正直自分は何をしたらよいか、何ができるのか悩みましたが、まず自分のできることからやってみようと考え方を変えました。各課で忙しい時期も違いますので、自分が目を配り、声がけをして潤滑油となることで、部署という垣根を越えて協力できる体制を整えたいですね。社員が一人で担当する業務を担うのではなく、繁忙期にはみんなで助け合いながら楽しく仕事をすることが理想です。これまでに様々な部署を経験させていただき、それぞれの大変さや大変な時期を理解していることも、現在の仕事に活かせていると感じています」と黒田さんは語る。

「会社の取り組みの一つに、“ノー残業デー”がありますが、こちらも協力しながら時間内に仕事をきっちり終えることが大切だと考えています。例えば、お客様の都合で仕事が時間外の作業になりそうな場合も、助け合いの精神でみんなでカバーしながら働きやすい職場環境づくりを積極的に行っていきたいと思います」

【総務部 総務課 課長 黒田 亜矢子さん】

◎「ワークライフバランス推進委員会」を設立

 今年、社内に「ワークライフバランス推進委員会」を立ち上げ、活動を開始した。現在は、女性社員が中心となり2ヶ月に1回の頻度で話し合いの場を設けている。課長の黒田さんもメンバーとなっており、「様々な年代の社員が集まって話し合いをしますので、コミュニケーションの場としても有効だと感じています。年代や部署によって、見方や考え方も異なりますから各々刺激を受けていると思います。先日、商工会主催のワークライフバランスに関するセミナーに参加した時に「女性社員が残業をせずに仕事に集中できるよう、お茶出しという仕事をやめた」という他企業の事例を聞き、早速、ワークライフバランス推進委員会で話し合いました。“お茶出し”、“電話受け”、“掃除”の3点をテーマに議論したところ、まず、お茶出しは女性社員が行っているのですが、社内の雰囲気づくりにもつながっていることから、このまま女性社員が行うことに。電話受けについても、女性の方が電話した相手が話しやすい印象があるのではないかという意見から、これまで通り積極的に女性社員が電話を受けることになりました。また、掃除については、社内アンケートで「全員で分担するべきではないか」という意見が出され、男性社員も含めた完全当番制で掃除を行っているため、現状のままとすることで話がまとまりました。他企業の事例を安易に真似るのではなく、自分たちの会社ならどうあるべきかをきちんと置き換えて考えることが大切だと改めて感じました」。

現在は女性社員のみでの活動だが、男性社員の参加も大歓迎としており、男性の意見も取り入れて行きたいと今後の方向性を語ってくれた。

◎女性の平均勤続年数は16年

 髙田地研に勤務する女性社員は平均勤続年数が長いという特徴がある。その理由の筆頭には「職場環境の良さ」があげられるのではないだろうか。現在、営業部営業主任として活躍する佐藤美紀さんも勤続20年を数える。事務職として入社し、営業部への配属など経験を積み4年前から現職に就いた。見積書や契約書の作成などを行っている。書類の作成には、資材等に関する細かな知識が必要だが、「私は社内勤務のため、現場を訪れたことがないので、現場のことを聞かれても解らないこともあります。ですから、工事や調査の担当社員が現場から戻ってきたら、話かけてコミュニケーションをとりながら現場の状況などを詳しく聞くようにしています。上司や同僚と話をすることで、知識も増え、仕事をする上でのスキルが向上していると感じています」と佐藤さんは語る。主任という役職を任せられてからの4年間、無我夢中で働きながらも「主任」としての「自覚」や「責任感」を持つことができてきたという佐藤さんは、長く勤めることができる会社の魅力について、「いい意味で、男女の区別がないことですね。例えば、揚水機の仕組みや、点検方法、工具の使い方など男性社員と一緒に学んだりしています。女性の立場ではなかなか経験できないことに積極的にチャレンジできる職場環境、そして社長に感謝の気持ちでいっぱいです」

【営業部 営業主任 佐藤 美紀さん】

◎社員が働きやすい職場づくり

 「当社は創業より60年間、水と土に関わる商売をしてきました。現在、私が3代目の代表として会社の舵取り をしておりますが、常に仕事の原点は家庭であり、家庭がしっかりしていないと集中力が発揮できないと思っています。60年の歴史のなか、長時間働けという時代、高度経済成長期など様々な時代を経て、会社は成長してきましたが、そのなかで、他社に先駆けて、午前8時から午後5時の中で集中して仕事をし、早く帰るよう呼びかけてきました。勤務時間内に集中して成果をあげられる社員を育てたいと考えています。また、残業の全廃や年間4~5日ほどのリフレッシュ休暇の取得を奨励していますが、まだ十分に浸透していません。それらを推し進め、社員が家族との時間をもてるよう環境を整えることが、当社のこれからの課題でもあります。私の父や母のアドバイスも参考にしながら、4~5月の連休に加えてリフレッシュ休暇を取得し、家族旅行などに行くよう社員に伝えています」と語る髙田社長。また、子育て世代の社員については、特に、休日出勤した場合の代休などもしっかりとるよう声がけしているという。

◎「チャレンジプロジェクト」とは

 社内には、入社2~3年の若手社員が主力メンバーとなり組織する「チャレンジプロジェクト」があり、定期的に集まりフリーディスカッションを行っている。発足から3年、最初は発言も少なかったそうだが、社長や常務がメンバーへ議題を投げかけ、各々が考え、発言する場を作り出した。そうすることで、しっかりと自分の意見を持てる社員に育つと髙田社長は言う。また、「新入社員ほど会社改革の答えを持っていたり、社外から来た新しい人の考えが会社の発展に繋がることがあります。そういった声を積極的に拾っていきたいと考えています」と語る。

【代表取締役 髙田 誠氏】

◎社員の生の声を拾うアンケート

 髙田地研では、創業者の代から社長自らが社員と向かい合うことを大切にしてきたという。髙田社長もその教えを大切にしているという。年頭には、「今年の抱負」「会社への要望」「取得したい資格」などについて記入する社内アンケートを実施しており、直接社長に提出することとしている。これが社員と髙田社長を結ぶ大切なコミュニケーションツールにもなっており、「アンケートの回答によっては、社長が親身に相談に乗ってくれるのでとても心強い」と言う社員もいる。7年前から始めたこのアンケートは、当初は不満から出る要望が多かったものの、現在は前向きな意見が増え、時には社員の要望から、会社全体に関わる重大な課題が見えることもある。「経営者が見落としてしまう部分を、現場の様々な視点から伝えてもらえるので、経営改革に大変参考になっています。社員から経営者目線としての意見が出ることもあり頼もしい限りです」と髙田社長は語る。

◎女性の活躍を積極的に応援

 髙田社長は「人口減少の影響による将来の労働力の確保については、危機感をもっています。女性の技術者が増えることは有り難いのですが、家庭との両立を考慮し、バランスよく活躍できる職場づくりに努めていきたいですね。男性である私が驚くような、女性ならではの視点も参考になります。当社の女性社員は、経験年数が長い方が多いので、業務量に配慮するというよりも、男性社員と同じようにどんどん仕事も任せるようにしています」

女性社員が考える髙田社長の良いところは「男女の区別がないところ」。男性女性の区別なく責任のある仕事を持ち、やりがいを感じられること、これが髙田地研の女性社員がいきいきと働き続けられる秘訣ではないだろうか。

 
2016年1月4日