やまがた子育て・介護応援いきいき企業
第34回 山形信用金庫

従業員 213名(男性 139名、女性 74名)平成25年9月現在

◎「山形いきいき子育て応援企業」登録について

 平成25年7月『実践ゴールド企業』認定

<登録までの経緯>
 「山形いきいき子育て応援企業」の新制度がスタート、さっそく『実践ゴールド企業』として認定を受けたのが山形信用金庫である。認定はこの7月ではあるが、この制度がめざす「社員が働きやすい職場環境の整備」については以前から深い理解があり、そしてそれを実践してきたことが印象的なインタビューとなった。
 その前提として、金融業という業界全体の傾向として、女性の職域拡大という課題があった。ある意味、男性社会であったというこの業界。そんななか、閉塞感を打開するひとつの方法として、細やかさや着眼点など、女性ならではの資質をもっと生かそうという動きがあったという。
 また同金庫では平成21年2月の合併をきっかけに、徹底的な顧客満足度(CS)向上の取り組みを打ち出した。その際、CSの向上には従業員満足度(ES)が密接にリンクするとの認識から、徹底的なES調査を行った。その結果を踏まえて平成22年8月に設立されたのが「ハートフル委員会」であり、現在のCS活動においても大きな役割を果たしている。
 平成24年度には「ポジティブアクション推進企業」として「山形労働局長優良賞」を受賞した同金庫。「山形いきいき子育て応援企業」の新制度で新たに5項目となった認定基準に照らしながら、取り組みと成果を見ていきたい。

お話を伺った総務課課長の堀明彦さん(左)、主任調査役の佐藤元俊さん(右)。
本部の職場風景

◎ 取組み:女性の活躍推進

・ 正職員の3割を占める女性職員の能力発揮は企業発展に不可欠である。そこで、理事長直轄の組織として、営業店の女性リーダー職員で構成される「ハートフル委員会」を発足させ、女性職員の意見を集約し、これまで男性主体だった商品企画開発等に反映させている。
・ 従来女性の配置が少なかった渉外や融資業務に積極的に女性を配置している。また、自己申告制度による希望職種も参考に人事担当部門と店長が候補者を選定し、職域拡大を勧めている。新たな職種への配置後は、必要な研修に参加させスキルアップを図っている。

●成果
・ 「ハートフル委員会」は、平成22年8月発足。各支店と本部の職員17名の女性で構成される。女性の視点から、顧客満足をさまざまな角度から検討していくことが目的。同金庫のキャラクターである「アンパンマン」をはじめとしたノベルティの開発や、各支店のATMコーナーに設けられた地域情報コーナーの設置、バレンタインなど時期に合わせたプレゼント企画など、女性そして子育て経験の視点から、利用者の立場に立ってアイデアを具現化させている。
・ 新たに渉外担当となった女性は、フリーローン商品のトップセールスを誇る。彼女の話を後進に聞かせる機会も設けるなど、そんな積極性を女性職員の全員が持っているという。

ハートフル委員会の模様
委員会によるCS活動のチェック

◎ 取組み:仕事と家庭の両立支援

・ 育児休業中の職員に対して、職場復帰がスムーズに行えるよう、目的に「ハートフル委員会(営業店の女性リーダーで構成)」で作成した「ままとも通信」を3カ月に1回送付している。また、毎月1回人事担当責任者と面談を行い、育児休業者の家庭状況や健康状態の把握を行っている。

●成果
・ スムーズな職場復帰のためのフォローも手厚い。金融機関ならではの事情のひとつにシステムの変更があるが、復帰の際に戸惑わないように「ままとも通信」で変更内容を知らせている。併せて月に一回の面談では、復帰後の託児についてもアドバイスを行っている。そのときが来て慌てないように、慣らし保育の必然性や、託児所の申し込み時期などの情報を提供。育児休業者の事情に合わせて、必要な情報を豊富な経験からアドバイスしているのである。初めての出産という職員には、とくにありがたいフォローとなっている。
・ 同金庫における、出産後の女性の育児休暇取得率は100%。しかも復職を急かされることなく、安心してしっかり1年間休むことができるという。「みんな子育ての大変さ、そして大切さを知っていますので、そこは安心して取り組んでほしいですから」と語る堀課長の笑顔には、制度の活用を根底で支える「心」と、それが根付いている企業の「土壌」の存在がしっかり感じられた。
・ 男性の育児休暇取得はまだ例がないが、「たとえ1週間であっても取ってほしい。奥さんにはなりよりの助けになるだろうし、自身にとっても大切な経験になる」と堀課長は後押しする。

3カ月に1度発行される「ままとも通信」

◎ 取組み:出産・育児・介護等により退職した女性の再雇用等

・ 出産後、本人の希望によりパートタイム労働者として勤務することも可能としているが、一定期間経過後、「パートタイマーの正職員への登用規定」(平成19年10月1日)により正職員に登用しており、登用後には役席者になった女性職員もいる。

●成果
・ 専門知識が必要とされる金融機関では、結婚や出産を機に一度退職を経験した女性がパートとして再就職することが多いという。また、1年間きっちりと育児休暇がとれる同金庫においても、それぞれの事情からパートで復職する職員もいる。逆にいえば、この「パートタイマーの正職員への登用規定」の整備が、パートとして働くことのモチベーション向上に繋がっているともいえるだろう。

◎ 取組み:男女ともに働きやすい職場づくり

・ 毎年2月に人事担当役員が、全職員とヒアリングの機会を持ち職場環境や各自の希望する仕事等を十分に考慮し、働きやすい職場環境づくりに務めている。
・ 人事考課規定を策定し、昇進・昇格基準を明確化し、全職員に周知している。また、公正な人事考課を行うための評価者研修を実施している。
・ 女性職員のリーダー育成のため、リーダーになるための実践的な参考図書を購入し、中堅女性職員全員に配布している。

●成果
・ パートも含めた全社員と個別面談を行っている。仕事上の配置希望や悩みはもちろん、家庭の話まで踏み込んだヒアリングを行っている。たとえば女性であれば出産などの予定があるだろうし、男女を問わず直面する可能性のある介護の予定などもしっかり聞き取りを行い、企業としての備えとしている。
・ 女性の職域拡大にしてもそうであるが、その人の能力にあった公正な評価、正しいポジショニングを実践している。その現れのひとつに、昨年の4月に改められた人事制度がある。それまでは一般、主任、代理、次長、支店長(課長)、部長(役員)という職務体系だったものを、主任と代理の間に係長職を設けた。ポジション的に間が空きすぎていたというのがその理由で、現在、9名の女性係長が誕生している。

◎ 取組み:県民の子育て支援・若者応援・地域貢献

・ 平成23年6月15日に地域貢献活動として「子ども見守り隊」を結成。当金庫キャラクター【アンパンマン】ステッカーを営業車・営業バイクに貼って得意先担当者が、当金庫営業エリア内に周知しながら、地域内の犯罪防止と児童・生徒の安全確保に努めている。
・ 「やまがた子育て応援パスポート事業」に取り組んでおり、当金庫キャラクター【それいけ!アンパンマン】の絵本を各営業店に用意している。また、当金庫は、ほのぼの店(トイレの貸し出し『取っ手付洋風ベビーシート』)、とくとく店(アンパンマンティッシュまたは風船プレゼント)を準備、来店したお客様からパスポートカードを提示していただき、プレゼントまたは、トイレの貸し出し対応を行っている。

●成果
・ 見回りについては、見回っているという行動と、それが周知されていることが大切。具体的に何かあった事例はないが、逆にいえば、その事実こそが目的を果たしているといえる。
・ キャラクター商品の開発や活用には、ハートフル委員会の意見が大いに生かされている。
・ 「やまがた子育て応援パスポート事業」については、パスポート提示のあるなしに関わらず、小さな子どもを連れた女性には積極的に声を掛けサービスを提供、たいへん好評だ。

営業のバイクに見回りステッカーを貼付する
 
2013年11月1日