企業インタビュー
山形市

有限会社柏倉工業所

女性が働きやすい職場=誰もが働きやすい職場 環境づくりを目指しています!
代表取締役
柏倉 広治 氏

<会社概要>
〒990-0891 山形市大字成安459番地
電話:023-684-1750
資本金:300万円
設立:1982年5月
社員数: 22名(男 12名 女 10名)
R4.4.13現在

昭和57年5月、山形市成安のこの地で私の父が創業し、私が2代目です。鋳物の生産が盛んな山形市で、弊社もアルミニウム製品のバリ取りを始めました。今は産業用ロボットや電子部品製造機器部品、防災関係部品、新幹線空調部品、医療機器部品、椅子関係の部品、自動車部品のほか、様々な部品のバリ取りを行っています。
珍しいものでは、防災用無線、サイレンの羽根を山形で作っており、そのバリ取りもしています。羽根を回転させて、そこからの風で音を出すのですが、ちょっと変わっただけで音色が変わるらしいです。

※バリ取りとは … 材料を切るなどの加工をした際に出来るバリと呼ばれる出っ張りを取ること。

どうして、これだけ幅広い分野の部品のお仕事を獲得できるのですか。

そもそもこういう会社が減ってきているのと、弊社は社員数が他社より多いので、量産物でも納期に納めることができるからだと思います。また、ロボット関係は弊社のホームページを見た宮城や秋田の工場からお声がけいただいています。
弊社の仕事は、機械に乗る前の仕事になります。基準のところにバリがついていると、基準にならないので、バリを取って全体的にきれいにします。この仕事は機械化がものすごく難しく、手仕事でしかできない細やかな仕事になりますが、品質、納期など信頼を得られるように努力していることを認めていただいているものと思っています。

若手社員の採用、定着に向けた取組みを教えてください。

機械化が難しい分、人材育成、特に若手の人材育成がものすごく大事で、一昨年、ホームページを作るときに、「新・発想・わかいチカラ」というテーマを決めて取り組んでいます。若い人が入ってくれないと、技術が伝承されません。昔みたいな力任せの仕事のやり方をしていると、若い人に入ってもらえませんので、工場内の整備や機械化など、いろんなことを進めてきましたが、最初は若い人に見向きもされませんでした。
2008年のリーマンショックの時に、弊社の関係する会社で辞めざるを得なかった若い方を採用しました。それをきっかけに、若手社員の将来の生活設計が成り立つよう、お客様とも話をして単価の値上げなど協力していただき、給料面や福利厚生などいろいろなことを解決してきました。お客様も私と同じ二代目、三代目で共感できるところがお互いにあったこともラッキーだったかもしれないですね。

今、ウィズコロナの中、人手不足の声も聞かれますが、御社はいかがですか。

産業用ロボットはこれからどんどん伸びていく分野で、弊社も増産体制をとってくれと言われております。現在、増産体制を取っている最中で、ハローワークさんを中心に、求人を出しています。人を入れることが急務になっています。みんなもともと素人なので、経験の有無はこだわっておりません。

MUCHIU(むちう)とUTUROI(うつろい)両方ともきれいで素敵な製品ですね。

UTUROI(うつろい)
UTUROI(うつろい)

我々のような会社は、お客様からいただいた仕事をやっているところで、それだけではなかなか発信力がないので、「自社製品を持った方がいいね。」というお話は前から言われておりました。ところが、弊社みたいな会社が自社製品といっても、全くそういう要素がないので話だけ聞いていたのですが、バフ磨きの仕事を、2、3年前から始めて、「こういう鏡面磨きだったら自社製品を持てるね。」ということで始めました。これだけの鏡面磨きの技術を習得するまで、5人の女性社員が本当に自分たちで勉強してくれて、ここまで磨けるようになりました。

※バフ磨きとは … 布製かその他の素材でステンレスの表面を仕上げるために行う研磨方法の一つ。

職場環境づくりに取り組むきっかけについて教えてください。

弊社の仕事は、汚れたり、重かったりと大変で、男性の仕事というイメージがありましたが、リーマンショックや東日本大震災など社会が不安定になっていく中で、弊社は逆に忙しくなり、求人を出したところ、女性の応募、特に若い女性の応募が多くありました。このことをきっかけに、機械化など女性が働けるシステムづくりを進めました。面接の中で、「私は製造業で働きたいけど働けるところがない。」という声がありました。特にお子さんがいる女性は、勤務時間の条件が合わない、残業ができない、祝日土曜日の勤務ができない、子どもに合わせて休むこともあると。そこで弊社は働ける時間を決めて働いてもらうというシステムを取り入れました。働く時間が限られた分、男性が負けてしまうくらい一生懸命働いてくれて、逆に生産量が伸び、お客様からも信頼を勝ち取ることができて、増産に繋がりました。弊社としても新しい働き方を構築することができたと思っています。
一方、忙しいということは、会社としてはよいことなのですが、逆に問題も出てきました。しかし、それに対応することによって、男女問わず有給休暇を積極的に使っていただいて、会社を休むことに気を使わないでいこう、という社風を作ることができました。

また、女性がリーダーになって、「私、この日休むから。この日あなたここに入って。」といった連絡体制、対応が自然とできるようになりました。勤務時間がお昼までの方がリーダーシップを取ったり、「私昼からいないから、こここうやっててね。」とか。お互い、小さなお子さんを抱えて、何があるかわからないというところに、共感しているのだと思います。菊地さんは、3時までの勤務の方なのですが、リーダーです。リーダーの下に正社員もいますし、いろんな方がいます。また、岸さんは、2人の中学生の息子さんを女手で育てていた方ですが、中心になって頑張っているし、「お互い様」っていうのがすごくよかったのかもしれません。岸さんは、パートから後にフルタイム正社員になりました。菊地さんはお子さんが小さくて、まだパートですが、いずれは菊地さんも正社員にと考えています。

今、女性社員1人が産休で休んでいますが、結婚して、お子さんを産んでという弊社で初めての社員です。産休のことはほとんど考えたことがなかったのですが、初めてそういう人が出たので、社労士さんといろいろ相談しながら対応しました。今、休んでいる方の分をみんなでカバーしながらやっていますが、何とかなるものですね。

実施にあたって苦労されたことを教えてください。

勤務時間を提示してもらって雇用契約書を交わしますが、お子さんの学校のこと、幼稚園の予定、お子さんの体調などでお休みする方、あとは途中で帰る方も結構いますので、周りの社員がそのことを納得してくれるか心配はありましたが、いつも頑張っている姿を男性社員が理解してくれましたし、「お互い様」という気持ちで同じ環境の仲間たちがカバーしてくれています。
また、これだけ女性社員が増えると、ハード面、建物やトイレ、更衣室など、ここは会社も変えなきゃいけない、ということでお金もかかりましたし、いろいろ、会社の取組みには勇気が要ることでした。もしかしたら辞められるかもしれないし、長く続くのかなというところで、そういう投資をして大丈夫なのかという思いもありましたが、逆にその方たちが長く勤められる雰囲気というか、環境づくりは絶対必要と思って取り組みましたので、苦労はしましたが、やってよかったなと思いましたね。

今後考えている取組みについて教えてください。

今は短時間勤務でも状況が変われば正社員として働いていただくことも可能ですが、さらに、女性が働きやすい会社にするにはどうするか。格差のない給与や労働条件など、これからは女性が働きやすいようにしていくのは当然ですが、男性と女性の違いを言わなくてもいいような状況にしていかないと、ダメだと思います。
その上で、お子さんのこと、学校のこと、ご家族のことなど、フルタイムで働けない事情は当然ありますし、そこが当たり前になったらいいと思います。「正社員と短時間勤務の違いってどこなの?勤務時間だけだよね、今は。」そんな感じです。
会社がそういう方向に向かっていくことが大事なので、「うちの会社、これしかつくれない。」となると「無理だ。」になってしまいますが、いろいろと舵取りしながらやっていければ、いろいろなことができると思っています。

社員インタビュー

会社の雰囲気についてどう感じていらっしゃいますか。

 菊池愛さん   岸由美さん

アットホームな感じで、温かい雰囲気を感じています。私が落ち込んだり悩んだりしていても、必ず誰かが声をかけてくれるなど働きやすい環境になっているので、そこがすごく働いてていいなと思うところです。(菊地愛さん)

私のいる部署は若い人からご年配まで幅広い部署ですが、性別や年齢に関係なく、相談に乗っていただけますし、本当に仲がいい職場です。(岸由美さん)

この会社に入ったきっかけについて教えてください。

求人を見て、休みと、勤務時間を自分で決められるというところにまず惹かれました。「お子さんを優先にしてください。」と社長がおっしゃってくださったことも大きかったです。(菊地愛さん)

福祉のケースワーカーさんからご紹介いただきました。社長からいろいろと親身になって話を聞いていただいたことと、「時間は子どもに合わせていいよ。部活とかは今しかないので、積極的に有休取って見ておいで。」と言っていただいたこともあり、この会社に決めました。(岸由美さん)

おふたりとも今リーダーとして会社を引っ張っていらっしゃいますね。

プレッシャーはありました。私がリーダーでいいのかなという思いと、私の前に、部署を作り上げて引っ張ってくれた方がいるので、つぶしてはいけないという思いもあって、最初の頃は本当に悩みました。今も皆さんにフォローしていただきながら頑張っています。(菊地愛さん)

私よりもベテランの方がいる部署だったので、リーダーになったときは、正直不安でしたし、初心者なのに私が引っ張っていいのかなと思っていました。みなさん優しいので、私も教えてもらいながらですが、みなさん、私の意見を優先してついてきてくれています。(岸由美さん)

MUCHIU(むちう)とUTUROI(うつろい)を作られたきっかけ、これからやってみたいことについて教えてください。

今までの仕事が終わって、これからどうしようとなったときに、メンバーで河原に行ったんです。河原で石積みしているときに、ヒントを得て、試行錯誤やってくうちに、卵型もかわいいなというので、石バージョン(MUCHIU)と卵(UTUROI)を作りました。今後は積み石だけでなく生活で何か使えるアイテムを作れたらいいなと思っています。(菊地愛さん)

これからやってみたいことがあれば教えてください。

いただいた仕事を、会社にご迷惑をかけないように、他社より、よりきれいに仕上げて、100%うちに任せると言っていただけるよう技術を磨きたいです。(岸由美さん)

取材:令和4年4月