やまがた子育て・介護応援いきいき企業
第49回 株式会社寒河江測量設計事務所

従業員数(2016年4月現在)
女性10名 男性37名(合計47名)

株式会社寒河江測量設計事務所は、国土基盤と豊かな地域づくりを専門とする会社です。

◎「山形いきいき子育て応援企業」認定について

優秀(ダイヤモンド)企業 認定 平成28年3月

◎経営方針

国土の発展から万人の信頼と満足の得られる経営を

◎経営理念

 ①国土の発展の為に地域社会に貢献する。
 ②お客様の信頼を基に、社業の発展を図る。
 ③全社員の「和」をモットーに事故防止に努め、社業にあたる。
 ④堅実経営を基に、適正利潤の確保で社員の生活向上と社業の安定を図る。

 寒河江バイパス沿いの西、月山をはるかに見わたす田園の中にある西根小学校と並んで建つ白い建物が、今回取材した『株式会社寒河江測量設計事務所』。山形市と仙台市に支店を持ち、天童、福島、東京に営業所がある。国土基盤整備の為に測量・設計・各種調査やコンサルタントを行う会社で、現在社員数は47名、うち女性社員10名が働く建設関連の企業である。1966年、現社長の父である先代社長が創業。1976年、本社を寒河江市中央二丁目に移転、その後2014年寒河江市西根地区の現在地に新社屋を建設、翌2015年1月に会社機能のすべてを移転。2015年は創業50年に当たり、また山形労働局の子育てサポート企業(くるみん)の認定を果たした年でもあった。

【代表取締役 安孫子 正芳さん】
【代表取締役副社長 安孫子 文剛さん】

◎国土の発展のために

 同社は主に官公庁からの事業を受注している。ISO9001の登録認証や、個人情報の管理を徹底し、プライバシーマークの認定も得ている。昨年、子育てサポート企業(くるみん)の登録認定を受け、また今年3月31日付けで山形いきいき子育て応援企業の優秀(ダイヤモンド)企業に正式認定された。業務の一つである補償コンサルタントは用地調査から補償額の算定までを行っている。一般住宅や事務所等の建築設計も行い、新社屋は同社のスタッフが設計したものという。
 「このたびの子育てサポート企業及び優秀(ダイヤモンド)企業の認定は、社員の採用時における会社のイメージアップにつながっていくものと考えています。企業として子育て支援を実践してきた成果でもあり、これからの励みにもなると思い認定を受けることにしました。私達の業界は有資格者で実績のある人が主任技術者や主任担当者になっています。ですから技術の継承を図るためにも若い技術者や女性技術者を積極的に採用します。当然技術者としての正規の認定を受けてもらわなければなりません。指示を待つのではなく、自ら仕事をする技術者を育てていきたいです。技術者の育成は最大の課題です」と、安孫子社長は言う。

【取締役総務部長 髙橋 三庸さん】

◎女性の活躍推進にとって欠かせない働きやすい環境づくりとは

 子育てをしながら働く女性社員から直接話を聞いて仕事との両立についてアドバイスをしているのが総務部長の髙橋三庸さんである。女性技術者を採用した経緯や女性の活躍、さらに女性の管理職への登用などについて語った。
 「初めて女性技術者を採用したのは昭和47年に1名で、測量士の資格所有者でした。現在10名いる女性社員の中で技術者は測量士1名、建築士3名(うち1名が一級建築士)、補償業務管理士が3名、それから土木設計技師が1名おります。新たな資格取得を目指して頑張っている女性社員もいます。技術関連の職業というと、どうしても男性の職場というイメージがあるのですが、女性でも技術者として活躍できる職業だということを理解して頂きたいと思っています。もちろん女性が子育てや家事をする中で、仕事と家庭を両立していくことは大変なことです。子育てや家事など生活実践の中から生まれてくる仕事の段取りや効率のよい仕事の仕方などは、女性の特徴ではないかと思っています。技術者となった女性は同性の後輩に対し、仕事と家庭を両立して働くことができるんだという見本になるような活躍をしてもらいたいと思います」と、女性の視点が会社の事業に役立っていると言う。
 同社では女性が働きやすい環境づくりのために育児休業制度と短時間勤務制度の取得率向上を図っている。現在、育児休業制度の取得率は100%。短時間勤務制度の利用者は90%である。女性の管理職登用についても、女性が少ない業種でも女性の発想でしっかり課題を克服できる貴重な存在として考え、女性の登用を積極的に推進中である。

◎仕事と家庭の両立(ワーク・ライフ・バランス)を支援

 少子高齢化が進行する中、同社では優秀な人材に末永く勤めてもらおうと、平成18年4月から育児休業等に関する規則を設けた。これまでも女性社員が子育てや介護をしながらでも働けるように雇用環境の整備を図ってきた。女性社員が第2子出産後に育児休業を取得したこともあり、出産した女性社員はみな育児休業を取得している。

 総務部長の髙橋さんは言う。
 「社会保険労務士から『子育てサポート企業(くるみん)』の申請をしたらどうかという提案があり、平成23年3月から5年間の一般事業主行動計画を策定しました。昨年8月に認定を受け、くるみんマークを取得し『時間単位の子の看護休暇』にも取り組み始めました。以前ですと私用があれば丸一日の休みを取るのが普通でしたが、子どもの学校行事や予防接種、健康診断など必要な場合、時間単位で取得できるようになりました。これまでの取得状況は通院、健康診断などで女性社員は8割、男性も昨年は2名の社員が付き添いや子守りなどで『子育ての看護休暇』を利用しました。制度の利用は、家族や周囲の理解と協力があればこそです。会社は社員を“宝”と考え、お互いの“和”を信条としていますので、仕事と家庭の両立(ワーク・ライフ・バランス)を図り、会社としてもより良い成果が出るよう推進していく必要があります。また我が社では水曜日は『ノー残業デー』を推進しています。さらに社員が少しでも家族サービスができるようリフレッシュ休暇の取得も推進していきたいと考えています。」
 同社では『キャリアプランシート』というシートを作成し、社員に意見を出してもらっている。シートをもとに上司と面談し、家庭上の悩みなど聞き取りを行っている。また『正社員転換制度』も実施中だ。正規雇用への道を開くもので、勤続6ヶ月以上が対象。本人が希望する場合、所属長の推薦を得て、代表取締役の面接試験を受けるという内容。平成26年度この制度を利用し、男性社員1名が正規採用されている。

【用地調査グループ 課長補佐 木村 千春さん】

◎女性技術者の活躍

 木村千春さんは現在、用地調査グループの課長補佐を務め主に営業調査の算定を担当している。勤続24年、女性技術者のリーダーである。
 「この職業を選んだのはアルバイトで1年間お世話になり、その時に興味を持ったのがきっかけでした。子どもが小さいとどうしても資格取得のための勉強を家でするのが難しく、会社の帰りや休日に時間を作って図書館に通い勉強していました。男性の多い中で働くのは大変なように思われますが、皆さん、女性には仕事以外にも家事や育児があると気を遣ってくれていますので、大変ありがたく思っています。また仕事を頑張りたいと思いつつ小さい子どもがいて大変だという後輩には、会社が働きやすい環境を整えているから心配せずに、男性社員や先輩の私達に任せてほしい、子供から手が離れるようになったらまた思い切り活躍してほしいと伝えています。現在、私は自分が技術者として認めてもらえていることをしっかり念頭におき、社会に対しても会社に対しても責任のある仕事をしていきたいと思っています。女性だからこそ気づくこともあります。それを提案できるようこれからも頑張りたいと思っています。」

【用地補償グループ 技師 阿部 由紀枝さん】

◎「短時間勤務制度」の利用

 阿部由紀枝さんは入社当時、設計部門に配属され、入社。2年目に育児のため一度退社したものの4年後に社長の声がけで再び入社、通算勤務年数は5年目となった。男の子が4人という6人家族である。一級建築士で、現在は補償業務管理士の資格取得を目指している。
 「職場に復帰する時に、社長から、実情に合わせて働いている女性社員が他にもいるので『短時間勤務制度』を利用したらどうかと勧められたのがきっかけでした。今は子どもの送り迎えや掃除もしっかりできるので助かっています。子どもが小さいうちはもう少し『短時間勤務制度』を利用したいと思います。当然、業務上できることが限られてくるので優先順位を付けて効率よく仕事を進めるようにしています。仕事と育児の両立は職場でも家庭でも周りの理解がとても重要です。部署が残業で大変な時でも先に帰らなければならないので、日頃から自分自身が頑張ることが大切だと思っています。子ども達がもう少し大きくなった時、 “お母さんの背中、かっこいい”と思ってほしいですね。」

 勤続15年の佐藤清花さんは用地補償に伴う調査や図面作成、算定を担当している。会社だけでなく家庭でも義父母やご主人の協力もあるので、仕事と家庭の両立をもっとしっかりできるようになりたいと希望を抱いている。
 「二男の育児休業も終えた頃に長男が幼稚園に通い始めたので、幼稚園のお迎えの時間には帰れるように2年間『短時間勤務制度』を利用しました。同居している義父母が家事や子どものことも頑張ってくれているので、とても感謝しています。男性の多い職場ですが、家庭を持って働くことに大変だと思ったことはあまりなく、周りの人がカバーしてくれていることで安心して仕事ができています。仕事先の現場で『測量だから男の人だけだと思ったけど女の人もいるんだね』などと話しかけて頂いていろいろな話をすることもあり、女性が働いていることで相手の方の不安だった気持ちが和らぐこともあります。仕事をしていると、子どもが初めてできるようになったことを見られないこともあるので少し淋しい気もしますが、少し大きくなった今は『お母さん仕事頑張ってね』と言ってくれます。子どもに励まされることは、大きな喜びと仕事のやりがいを感じさせてくれます。」  

 
2016年5月2日