やまがた子育て・介護応援いきいき企業
第60回 藤庄印刷株式会社

◎ 従業員数(2018年2月現在)
女性54名 男性114名(合計168名)

藤庄印刷株式会社は、チラシや冊子等を制作する商業印刷を中心に、製本加工やデザイン、デジタルメディアコンテンツ制作、マーケティングリサーチなど幅広い分野での事業を展開している。

◎「山形いきいき子育て応援企業」登録・認定について

実践(ゴールド)企業認定 平成25年9月30日

◎事業内容

 商業印刷を中心に、幅広い分野で事業を展開する藤庄印刷株式会社では、蔵王の麓に印刷拠点「蔵王の森工場」を構える。広い工場の1階には大量印刷を得意とする大型の輪転機をはじめ数種類の印刷機器が並び、2階は通常業務を行うフロアのほかに、顧客の守秘業務に対応した個室やフォトスタジオなど、あらゆる受注に対応できる設備が整っている。
 また、企画立案からデザイン・編集、印刷・製本、発送までの一連の業務をこの大きな工場で一貫して行っていることも、強みのひとつ。パンフレットや書籍はもちろん、特殊なセキュリティ加工を施した印刷物や大量発送を伴うデータプリントサービスまで、さまざまなニーズに応じた業務を行っている。

【整然と印刷機器や印刷物が並ぶ工場内】

◎社会貢献と環境への配慮

 経営管理部のリーダーを務める宮林隆男さんは、これまでさまざまな業務や印刷工程を経験し、現在は管理全般と見学者の対応などを担っている。
 「当社は毎年、中学生や高校生の就業体験や一般の方々の工場見学などを受け入れることで、地域の方々とふれあう機会を作っています。そのきっかけとなったのは、平成23年の東日本大震災の時に、社員有志が集まってボランティアに行ったことですね。その後、社内に社会貢献の機運が高まり、『地域の人にどんな会社なのかを知ってほしい』と、今まで以上に広く門を開くようになりました」。
 また、環境保全への取り組みも重視し、平成26年には環境に配慮した印刷工場として「グリーンプリンティング認定工場」の認定を取得。「未来を見据えた地球環境保全に貢献する」ことを理念に掲げ、その方針を具体化することで社員と共有しながら環境へ配慮した取り組みを行っている。

【年一回実施する歩道清掃】
【「グリーンプリンティング認定工場」の認定を取得】

◎業務体制と制度の改善で働きやすい職場づくり

 「当社は営業から企画デザイン、印刷製本の工程まで各部門に人を配置していますが、仕事内容で男女差はないと考えています。そのため、同じ仕事に固執するのではなく、特定の部署が忙しい時には手伝いに行き、その仕事をしてもらいます。そうした部署を越えた『業務のマルチ化』を進めることにより、お互いの業務内容について身をもって理解し、それぞれの現場の苦労を知ることに繋がっていると感じています」。
 また、印刷業は、納期や顧客の都合により、従来の勤務時間以外の業務や残業が発生することもある業種。そのため、シフト制を導入し、午前9時台、10時台、午後1時台と様々な時間帯の出社を選択できるようにしている。取材や撮影の現場からの直行・直帰も可能とし、形式にとらわれず柔軟に対応して、従業員が仕事しやすい環境を整えている。

 中途採用での雇用が多い藤庄印刷株式会社では、パートなどの非正社員も少なからず在籍していたが、正社員転換制度を導入してからは従業員に制度の周知と希望調査を行い、希望者には面接をした上で正社員への転換をしてきた。そのため、今では全従業員168名のうち150名以上が正社員と、圧倒的に正社員が多い。
 「求人を出しても、この制度があることで安心するのか、申し込む人の数が増えたような気がします。中には扶養の関係でパート等の継続を望む従業員もいるのですが、ライフスタイルは年月で変化するもの。これからも、従業員が望む形で働き続けられるように、制度の利用について、定期的に声がけをしていく予定です」。(宮林さん)

【工場の敷地内で芋煮会】

◎従業員の意見を積極的に取り入れる「社員の声」

 藤庄印刷株式会社では「社員の声」投函箱を設置しております。これはよりよい会社にするための御意見・御提案をお願いするものです。例えば、「トイレをきれいにしてほしい」などの具体的な要望が挙げられ、それが福利厚生の充実へと繋がっていった。「なかなか普段、声を上げることは難しいと思います。そういう場を作ることで言いやすくなり、これまでにいろいろな意見が出ました。『有給休暇を時間単位で取れるようにしてほしい』という要望もその時に出て、経営陣で具体的に検討して有給休暇制度に取り入れました」。
 また、従業員は比較的30代から40代が多く、全体の1/3程度が女性。そのため、常時数人が育児休業で休んでいるという。社内では「お互い様」の意識が根付き、休んでいる人の業務をフォローするための体制を作って業務に支障がないように配慮している。
 「従業員あっての会社ですから、ここで働く人に幸せになって欲しい。工場が大きいので、毎日いろいろなことが起こりますが、それがまた勉強になります。これからも、今までと同じく改善していきながら、よりよい会社づくりをしていければと思います」。(宮林さん)

◎1カ月の育児休業取得 子どもと過ごす毎日で「父親」を実感

【営業本部「クリエイティブラボ」 歌丸 唯斗さん】

 営業本部「クリエイティブラボ」に所属する歌丸唯斗さんは、印刷物の企画編集やディレクションに従事し、忙しい日々を送る。
 約1年前に男の子が生まれ、産後1カ月を過ぎた頃から約1カ月間、社内では男性初となる育児休業を取得した。
 「今まで、女性は育児休業を取得していましたが、男性では私が初めてでした。取得しようと思ったきっかけは、取材先で育児休業を体験した男性の話を聞いたことが大きかったですね。その人は、子育てがとても楽しそうで、キラキラしていました。私もいずれ、子どもが生まれたら取得しようと、その時に思いました」。
 多くの顧客を持ち、業務に携わっていた歌丸さんは、自分が休むことで周囲に迷惑がかからないようにと入念な引き継ぎをし、業務を同僚に託して育児休業に入った。生後1カ月の赤ちゃんと過ごす毎日の中で、家事や育児をまんべんなく行うことで、子どもへの愛情がさらに増したという。
 「出産にも立ち会いましたが、育児休業を取得して毎日一緒に過ごしたことで、『父親のスイッチ』が入りました。妻からも『助かった』と言われたことはありますが、2人で育児をするのが当たり前という感覚なので、お互い気を遣わずに、できることをやってきました」。

 今は、なるべく早く帰るようにしながら、週末は一緒にお風呂に入り、休みの日には家族でプレイルームなどに遊びに出かける。我が子と過ごした1カ月で得たものは大きく、自分の体験がそのまま仕事や考え方にも反映され活かされている、と感じている。
 「育児休業で得た家族との時間は、夫婦の役割を再認識したり、子育てを実感したりすることができる時間でした。子どもは授乳期、離乳食期など段階を踏んで成長するので、できればその過程で複数回育児休業を取得できるといいなとも思います。また、『育児休業は短期間でも良い』ということを、私も取材を通して知りました。収入や仕事の兼ね合いから『1年間の育児休業』に躊躇する場合、1カ月でもいいんです。男性もぜひ取得したほうが良いと思っています」。

◎育児休業と時間単位の有給休暇を活用して仕事と子育てを両立

【営業本部「デザインラボ」 渡部 典子さん】

 営業本部「デザインラボ」に所属する渡部典子さんは、勤続17年を迎えるデザインのプロフェッショナル。チラシやポスターなど印刷物のデザインから写真撮影のコーディネートまでを担い、数々の作品を手掛けている。
 「デザインの仕事は、私にとって『社会の一部になることができる』と感じる大切な仕事です。制作したものをいろいろなシーンで誰かが見てくれて、役に立っていると感じることが、仕事のモチベーションになっています」。
 渡部さんが産休・育児休業を取得して出産したのは、6年前。当時は残業も多く、多忙を極める当時のデザインの部署での育児休業取得は、渡部さんが2例目で、子育てしながら復職したのは初めてだった。
 「仕事から離れて本当に大丈夫か、という不安もありましたが、チームの仲間に私の抜けた分の仕事を補ってもらい、産休と育児休業合わせて約1年間の休業をいただきました。近くに子育てを助けてもらえる人がいなかったので、育児休業が終わってからは保育園に預けています。夫がとても協力的で、子育てはもちろん、週末にはご飯も作ってくれます。お互い、似ている仕事をしているため、忙しい時や遅くなる時の状況も察してくれるのがありがたいですね」。

 昔に比べ、会社全体として確実に残業は減っているが、それでも繁忙期はあるもの。そんな中でも、「できるだけ残業にならないように」というチーム内の配慮を感じながら、毎日を過ごしている。子どもが病気の時など急な対応が必要な時は、遅刻や早退が可能な「時間単位の有給休暇」を使い、助かっているという。
 「息子は5歳になり、特にやんちゃな盛り。慌ただしい毎日ですが、周りに助けてもらいながら、仕事と子育てのバランスをとり、続けられていると感じています。発達障がいもある息子と向き合い共に過ごす時間は、発見と学びの連続で、何物にも代えがたい大切なものです。これから出産・子育てをする人は、会社の制度を活用して、みんなでフォローし合いながら、仕事と子育てを両立してほしいですね。私も、これから子育て期を迎える同僚・後輩には、『仕事はまかせて!』と言ってあげたいです」。

 
2018年3月1日