「労働やまがた8月号」今月のひと

第29回技能グランプリ(全国大会)
金賞・厚生労働大臣賞 受賞
株式会社 花泉 代表取締役
大泉 拓也さん

高校卒業後上京し、専門学校へ入学。
その後大田市場(東京都中央卸売市場)での研修や、都内の生花店での勤務を経て、27歳で山形へ戻りました。
37歳で株式会社花泉の代表取締役に就任し、経営から人材育成まで幅広く活躍されています。
そして、今年2月に行われた第29回技能グランプリ(全国大会)では、「フラワー装飾」職種で見事、金賞・厚生労働大臣賞を受賞されました。

◆創業:昭和53年
◆所在地:山形県寒河江市高田3丁目188
◆代表者:大泉 拓也さん(代表取締役)
今年で40年目を迎える株式会社花泉。
他店の2倍から3倍近くの花の種類・量を取り揃え、お客様が花を選ぶ楽しみを感じられるお店づくりをコンセプトにしています。

現在の仕事に就かれたきっかけを教えてください。

  お花が好きで花屋を始めたというよりは、家業だから、というのが強いです。でも、家業で継いでそれが好きだって思えるのはラッキーですよね。すごく恵まれてるなと自分でも思います。

仕事内容について教えてください。

 山形生花地方卸売市場で、月・水・金曜日に切り花の競り、木曜日に鉢物の競りがあります。競りが無い日は朝から店頭に立っています。
 この工夫は県内でも花泉だけだと思いますが、仕入れた花はすぐにお店に陳列しません。あえて一昼夜水につけて動かさず、植物が先端まで水を吸い上げられるような状態にして、お客様の手元にいった後、途中で水枯れしてしまうことのないようにしています。毎日水を交換しますが、新しい花は火・木・土曜日に店頭に並べます。

御苦労されていることはありますか?

 手間がかかる仕事なので、そういうところが大変なんでしょうね。ただ、あまり大変だって感じていないんです。朝早くから夜まで、力仕事なのもありますが、それが普通なんですよね。

どんな時にやりがいを感じますか?

 お客様に喜んでいただいた時です。大変だと思うことが全部解消されちゃうんですよね。私達の仕事は「ありがとう」と言われる頻度がびっくりするくらい高いんですよ。そういう面では辛さよりも喜びの方が前に出てくると思います。
 大変なのは駆け出しの1年目、2年目の頃です。それを超えて実際に接客をするようになると、仕事の内容も大分変わってきます。お客様との対面で、お客様からの「ありがとう」を投げかけてもらえるポジションに就くと、もう辞められないですよね。

心がけていることはありますか?

 喜んでもらうためにはどういう風に店づくりをしていくか、ということは考えています。
 婚礼に関しては、お客様がやりたいと思っていることを形にできるように、打ち合わせや提案の仕方などを、なるべく担当者を中心にやっていこうとしています。
 葬儀に関しては、スタンド花と言われる昔からずっと使っていたものプラス、花祭壇という祭壇に花を飾って装飾するというのも、3年前くらいからやり始めています。
 とにかくお客様が求めているものが作れる技術を持った人間になるというのが、今、私が社員の人達と話をすることです。

後進育成の取組みについて教えてください。

 入社後2年経つまでは、店頭で接客はさせません。他にもお葬式の花を作ったり、配達をしたり、店舗内ではない仕事があるので、主にそちらの方をしてもらいます。ある程度ポジションを決めて、その分野の社員達が打ち合わせや見積もりを全部商談して決めてきます。そしてその分野のトップになっていない社員達がいろんな仕事を手伝うんです。そうすると、その人の能力の発揮される場所が見えてきます。自分のやりたいことと上手にできることの違いがわかってきたりするんですよね。
 人を何とかして活かしていかなきゃいけないので、そういう風に会社の仕組みを作ってそれぞれの担当を作って、責任と義務の両方を考えさせるようにしています。

今後の目標を教えてください。

 目標はいっぱいありますね。
 人材育成の面からすると、技能五輪の全国大会に出れるような人材を育成したいと思っています。そういう気持ちのある子を育てていきたいなと。
 外に出ていくと、コンテストに出ている友達がたくさんできます。外に出て行ってる人ほどいろんな人と繋がっているので。1人で商売してるわけではないんですよね。わからない事があったら聞けますし。もちろん技術の向上にも繋がります。
 私は今まで1人でコンテストで名前を売ってきているだけなので、やっぱり会社を大きくしていきたいとも思ってますし、たくさんの人に喜ばれるようにもっともっとやらなきゃなとは思ってます。

【第29回技能グランプリ(全国大会)について】

大会に向けて取り組んだこと、前回の反省点など、教えてください。

 3回も出させていただいてきたので、失敗がたくさん積りまして反省することばかりでした。技能グランプリの前に山形で技能五輪全国大会が開催されて、それのお手伝いをさせてもらったりして、傾向と対策というか、評価されるポイントがどこなのかわかってた気がしました。作品づくりをしながら、今回は形にできたかなと思います。今まで以上に練習しました。

課題について御苦労されたことはありますか?

 作品の中で大変だったのは花束ですね。この寸法以内で作りなさいという規定が今年から初めて導入されたんです。でも、花束を寸法どおり作ると、普通の花束にしかならないんです。形と寸法が決まってるものにデザインを自分なりに入れるっていうのが難しかったです。他の人達と被らないように独自性を出すにはどうしたら良いか、数限られた手持ちの花材の中で人がやらないような事をどうやったらできるだろうということをずっと考えてやってるんですけどね。作ってはみたものの、今年初めての課題で評価のポイントもわからなかったので、今年一番の戸惑いでしたね。

金賞・厚生労働大臣賞を受賞した時の気持ちを教えてください。

 やっと終わった、やっと卒業ができる、と思いました。
 今回の大会に出る前、「前回敢闘賞取ったし、もう辞めます」と言ったんです。でも、大先輩方から「ラストチャンスだぞ。せめて3位以内に入らないと駄目だ」と叱咤を受けて、「じゃあ最後の1年頑張ります」と言って練習を始めました。その叱咤があったからすんなり練習したんだと思いますね。時間をなるべく割いて、スタッフにもお願いして、随分籠って練習してましたね。
 どんな結果が出ても、これで最後って思ってました。

受賞後に変わったことはありますか?

 他の大会でも全国1位を2回いただいているので、3回目の今回は「ありがとうございます」という感じでしたが、初めて日本で1位になった時は、実は消えてなくなりたいと思うくらいのプレッシャーがあったんです。私の耳には、「良かったね」という言葉の裏に、「1位だね」という言葉がついてくるんですよ。背中を追われるようになると、そこにはまた違うプレッシャーが生まれます。それを乗り越えるまで結構時間がかかりました。今はそれを全部克服してるんですけどね。
 自分が取ったからというより、お客様の「花泉から買って来たんだぞ」というステータスになれることが一番の喜びですね。

趣味や最近興味のあることは何ですか?

 車を運転することです。多分どこまででも行っちゃいます。妻も運転が好きなんですが、運転席の奪い合いをしてます(笑)
 旅行って言うほどの旅行じゃないですけど、「ちょっとお風呂入りに行こう」って言って赤湯まで行っちゃうとか。わざわざお風呂入るために1時間かけて行きます(笑)

大泉さんのリフレッシュ方法は何ですか?

 花以外のことをする、あとは自然を見に行くっていうのもありますね。
 大会やコンテストで作品を作る時、行き詰まってどうにもならなくなった時、私には逃げ込む場所があるんですよ。大井沢なんですけど。自分が生まれた生活圏の中の自然っていうのは昔から見慣れてるので、自分が花のコンテストに出た時に、自分の地域の美しさみたいなのが作風に出ると思うんです。
 私達は植物というものを扱うデザイナーなので、意識的に植物を見に行くようにしています。

県内の若手技能者の方に向けたメッセージをお願いします。

 技術を磨くことは、全てお客様のためになるものです。全体の流れから見たら、どこか一ヶ所の歯車のものを作ってるのかもしれないですけど、でも、最終的に誰のために何を作っているのかということを想像したうえで製作をしているという気持ちを、ぜひ持って欲しいなと思います。
 常に目標を持ってチャレンジして欲しいです。チャレンジしないと何も変わりません。留まってしまうと、その先は後退しかありません。常に最良のものを追い求めていく貪欲さを持って欲しいです。
 1年目を超えれば2年目に見える世界があって、弊社で言うと、3年目店頭に立ったら立ったなりの見え方があります。その役職によっての見え方があると思いますので、その見え方をどんどん変えていくことが自分にとっての肥やしになりますし、チャレンジして失敗をしないと、自分の糧にはならないんですよね。私は今回優勝させてもらいましたけど、その前3回失敗してますからね。失敗をして恥をかかないと、良いものは作れないと思います。失敗があって初めて成功があるものだなぁと、今回改めて考えさせてもらいました。
 また、技能グランプリに出場したことで、たくさんの人と繋がりました。大会の練習の時も、時間を計ってくれたり、アドバイスをしてくれたり、良い成績を取るためにみんな応援してくれました。競技会に出ることで相談できる友達もできますし、何より技術の向上に繋がりますので、技能グランプリや技能五輪に出ることは非常に有意義だと思います。

 
2017年8月1日