H30「労働やまがた9月号」今月のひと

株式会社マイスター
代表取締役
髙井 作 さん

東京都生まれ。大学卒業後、金型の生産管理を行う都内の企業に就職。その後、縁あって山形でマイスターの前身となる(株)タカイ工機を創業。趣味はラジオ深夜便、家庭菜園、読書、孫と遊ぶことなど多数。

働き手不足が叫ばれるなか、女性や高齢者、障がい者といった潜在的な働き手の確保の必要性が取り上げられています。今回の「今月のひと」では、女性の積極的な活用などの取り組み等により「経済産業省ダイバーシティ経営企業100選」にも選ばれている、寒河江市の「株式会社マイスター」の髙井代表取締役にお話を伺いました。女性が活き活きと働ける環境づくり、また女性ならではの細やかさが製造業にもたらす効果等についてお聞きしました。

法人概要

1976年、山形県河北町にボイスコイル巻線・コイル枠の加工業として創業。1980年に前身となる㈱タカイ工機を設立、切削工具研削を始める。2008年に現在地に本社・工場を移転。
2004年には機会均等推進企業として山形労働局長賞を受賞、2013年に経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」受賞、ワーク・ライフ・バランス優良企業知事表彰を受けるなど、働き方に対する評価も高い。

御社の事業内容を教えてください。

切削工具の再研削・成形、改造・設計製作と精密治工具・金型部品等の加工・組立を行っています。自社製品はなく、100%受注されたものだけを製造しています。「切削工具」は鉄を削るための刃物やドリルを作ること。「精密治工具」では、例えばIT部品を作っているメーカーのラインであれば、そこで必要となる消耗部品を作っています。いずれもプロが使う特殊な工具を作っており、いつどういう依頼が来るかわからないので、製造部門の社員一人ひとりの技能レベルを上げていくことが求められます。弊社の社員は年数かけて育成してきた人材ばかりです。

女性を積極的に雇用するようになったきっかけを教えてください

以前よりも少なくなったとは言え、山形県は三世代同居も多く、農業や会社勤めをしながら家族全員が働いている家庭が多いです。女性の年齢階級別労働力率をグラフで表したときに出産・育児期に就業率が下がるM字カーブが、山形県の場合は30代の時に若干減少するだけで、高齢になるまで働くという特徴があると思います。
我々が作っている工具は、時代と共に小さく、薄く、細くなってきました。その時、女性の手先の器用さや物事に対する真面目さが大きな武器になるのです。そうしたことを踏まえ、将来を見据えて女性の雇用を考えていきました。

具体的に、どのような取り組みをされたのでしょうか。

最初の頃は、いざ工場を見ると「こんなことできない」と尻込みしてしまう女性が多くて。それはそうですよね、工場内は男性ばかりで、難しそうな機械を扱っているわけですから。そこで、女性だけの仕事場として、明るく清潔感のある部屋を確保し、簡単にできる研磨作業から始め、徐々にスキルを身に付けてもらいました。1~2年経つと男性と遜色ない仕事ができるまでになり、山形県で初めて技能士1級の資格を取得するまでになりました。
子育てでいえば、弊社における女性社員の割合は30%。結婚し、産休育休をとりながら子育てしている社員も多いです。子どもが1歳を過ぎた頃に、復帰後の子育て環境について尋ねます。「保育園に預ける」「家族にみてもらう」「小学校に入学する頃まで時短にしてもらえれば勤められる」など、それぞれが置かれている状況を育休中も面接を繰り返しながら、復帰後も徐々に会社に馴染んでいけるような制度作りを進めてきました。常に、数人は育児でいないという前提で、労働力を確保しています。
本人が来づらくならないよう、復帰する前から社内でミーティングを行い、「復帰したばかりで大変だと思うから、こういう仕事から始めてもらおう」と意見を出し合う検討会を開きます。こうしたことが「男女雇用均等」だと思います。男女が同じ時間を働く、重いものを女性も持つ…ではなく、性差を考慮した働き方のこと。ただし、男性も子育てや介護に参加する時代になり、状況は変わってきています。「育児や介護があるので、残業できない」とか「さくらんぼの時期なので休ませてほしい」「早く帰るので、代わりに早く出社したい」という社員の希望を認めています。本人が生活パターンを崩さずにすむように雇用していくことが企業側の社会的責任だと考えています。

女性を優遇することについて、男性社員からの反発はありませんでしたか?

「社長は女性に甘すぎる」と当初は反発もありました。ですが、こうした取り組みは20年ほど前から行っているので時が経てば「当たり前のこと」になりますし、男性自身、結婚すると女性がどれほど大変かを理解できるようになるんですよね。

非正規社員の方もいらっしゃるのでしょうか。

非正規やパートという分け方は、当社では特にしていません。希望があればそういった雇用形態をすることもありますが、その人に合った働き方で、週に1、2回来てもらうという方もいます。また、女性に管理職を会社からお願いするということはしません。家庭、子育てが主体の人に、無理に嫌がることをさせてもよいことはありません。もちろん、希望と能力があれば別ですが。
採用については年齢問わず募集しており、他社で定年退職をしてから当社で新たなチャレンジを始めた社員もいます。切削工具の加工の経験がなくても、その人がこれまでやってきた分野に対するキャリアと人生経験があるわけです。入社してから、「得意分野」を強みに仕事を探してもらう。社会的な経験されてきた人たちは、今、会社にとって足りない部分を見つけ出してくれますから。

明るくデザイン性のある工場ですが、働きやすさとどう結びついているのでしょうか?

仕事の時間を考えると、退職するまでかなり長い時間を職場で過ごすことになります。と、考えると劣悪な環境に長く身を置くのは自分の時間をないがしろにしているということ。どうせ働くなら、気持ちの良いところで働いてもらいたいと考えました。特徴的なのは、上から見ると建屋全体が正三角形になっていること。人間は失敗したり間違ったり、休んだりしたいもの。そういう人間らしさを「ゆとり」として捉えて空間に置き換えると三角の発想に辿り着きました。

今後の目標を教えてください。

私は来年で退任することを前もって決めているので、次世代にいかにうまくバトンタッチしていくかを目標にしています。会社としては5年ごとの計画に基づき、景気の変動に左右されない企業経営を目指しています。そうした点において人材の確保は重要です。先行投資してでも技術者を育てていくことが、今後の経営にも繋がっていくと考えています。

実際に子育てをしながら技術職に従事している女性社員の野口さんに話をうかがいました。

 

野口亜美(のぐち つぐみ)さん
入社して14年目。入社後3年の実務経験を経て「切削工具研削2級」を取得する。3児の母。

技術的な仕事を希望して入社されたのですか?

なんとなくは知っていましたが、特に技術や資格を取りたくてというわけではありませんでした。前職は化粧品販売でしたが、仕事内容に特に不安はありませんでした。入社当初にお世話になった先輩が技能検定を取っていたので、自分も自然と資格を取りたいと思うようになりました。

ワークライフバランスはいかがですか?

結婚して、二人目の子供を産んでから入社しましたが、家庭の協力もあり、職場の人もいろいろ気にかけてくれるので、仕事と家庭の両立について困ったことはありません。女性だけでなく、男性にもいろいろ理解してもらうことが大切だと思います。

女性技術職を考えている方にメッセージをお願いします。

子供を産んでも戻ってこられる場所があるので、安心して働くことができると思います。

 
2018年9月3日