R元「労働やまがた10月号」今月のひと

山形陸運株式会社
常務取締役 
片山 恭寛(やすひろ) さん

「健康経営」という言葉をご存じでしょうか。健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で捉え、実践することで、従業員の活力や生産性の向上など組織の活性化をもたらし、経営面でもプラスの効果を生み出すという考えです。今回の「今月のひと」では、経済産業省認定の健康経営優良法人に2年連続で認定されるなど、健康経営の取組みのほか、働き方改革にも積極的に取り組む、山形陸運株式会社の片山恭寛常務取締役にお話を伺いました。
会社概要

昭和25年に創業、現在、従業員数は174名、車輌数は140台(トラック120・フォークリフト16・除雪用ショベル4)。山形市流通センターに本社を構え、トラック輸送、JRコンテナ、倉庫業などをメインとして、農産物、石油類、土木・建築資材、工業製品、食料品など多岐に渡り輸送事業を展開しています。人々の生活に不可欠な、「物を運ぶ」事業を通して、社会に貢献する”という理念を掲げて今日に至っています。
早くから社員の健康づくりを進める取組みを行っており、平成30年、31年と2年連続で経済産業省から「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」の認定を受けています。

御社の事業内容について教えてください。

現在は米や飲料製品、建築資材などのトラック輸送をメインにしています。輸送は長距離だけでなく、県内では引っ越しや県の学校給食、楽器の運搬なども行っています。
創業当時、本社は山形駅前、各駅に事業所があり、貨物列車による通運事業(貨車の積卸、配達等)を行っていました。しかし、県内での貨物取扱いが縮小されていくのに伴い、本社を流通センターに移転し、トラック輸送へと転換していくことになり、現在は仙台の宮城野駅から山形までコンテナを列車の代行でトラック輸送しています。
その他、以前は市内にセメントを保管するサイロや飼料工場があって、貨物での輸送、配送を行っていましたが、どちらも今は宮城からトラックで運搬しています。

片山さんのお仕事について教えてください。

昭和49年に事務職として入社し、最初は貨物列車関係の事務を行っていました。その後、長距離トラックの配車係をしていました。例えば東京の築地市場まで荷物を運び、横浜や千葉で原料を積んで山形まで帰って来るという輸送の管理です。当時は全部手書きでした。その後営業を経て、平成5年から現在まで、採用や賃金関係、福利厚生面などの総務関係の仕事をしています。あと、社内の行事の動画を撮って、会社のホームページに上げたりしています。
社外では、県の社会保険協会の理事や、労働局の安全衛生会議の委員もしています。

働く上で心がけていることやモットーを教えてください。

常に新しいことに挑戦し続けること、言葉ではなかなか伝わらないこともあるので、行動で示すことをモットーとしています。また、仕事をする上では体が第一なので、健康を意識した飲食を心がけています。野菜から食べたり、玄米の代わりに米ぬかを食べてみたり、サプリメントも飲んでいます。それから、腹八分目であまり余計に食べないようにしています。お酒もほどほどに。

 
【健康経営優良法人認定証】

健康経営や働き方改革に取り組むに至ったきっかけ、経緯を教えてください。

現在は、ドライバー不足の解消が喫緊の課題です。将来に向けて、採用や雇用を維持していくため、他社との差別化策として健康経営に取組み、社員の健康を守ろうという目的がありました。
元から社員の健康には気を付けていましたが、本格的に健康経営を取り入れたのは平成25年頃からです。きっかけは、関連会社の整備工場で社員が突然死したことです。死因は業務とは直接は関係ありませんでしたが、当時、高校の部活動中の心臓発作で亡くなった事故を耳にしたこともあり、AEDを全営業所に設置するようになりました。社員のために何ができるか考えて、思いついたことを積極的に実行しました。
ドライバーが病気などで休んでしまうと、他のドライバーに負担がかかり、労働時間も増えてしまうので、防止するにはドライバーの健康維持が大事になります。病気にならないこと、(体調不良による)突然の休みがないこと、会社を辞めないこと。この三つを達成し、会社に休まないで来ていただくことが、社員を、ひいては会社を守ることに繋がると思っています。

健康経営や働き方改革の具体的な取組みを教えてください。

具体的取組みとしては、以下の取組みを行っています。

【健康経営関連】
●アーム式血圧計や非接触型体温計を設置しています。
●定期健康診断のオプションとして胃がん・大腸がん検診を全社員に実施しています。平日だと、どうしても会社にいる社員しか受けられないので、土日に検診バスに来てもらい実施しています。
●全車両に事故や大雪時の渋滞対策として非常時用のカロリーメイト、経口補水液、簡易トイレを用意しています。
●基本的に車両はローテーションで運転するので、受動喫煙防止のため全車両及び建物内禁煙としています。喫煙率も以前から下がってきて過半数を割っており、今後は敷地内禁煙も検討しています。
●インフルエンザの予防接種を全額補助しています。
●熱中症対策でバッテリー駆動のエアリージャケット(空調付きの作業服)を積み下ろしの際に使用し、ヘルメットも茶色から白へ、通気性が良く、バイザー部分も透明で視界が広くなったものに変更しました。
●健康ウォーキングを実施しています。全社員にスマートウォッチ(活動量計)を配付し、3カ月の平均を取り、最初よりも一定数伸びた人にはQUOカードを進呈しています。皆、一生懸命歩くようになって、平均1万歩以上も毎日歩いている人もいます。この前、全社員の合計歩数をまとめたら、なんと地球8周分にもなっていました。地球1周が大体4万㎞なので32万㎞、36万㎞でまもなく月へ到着する勢いです。こういったアイディアは役員たちで出し合い、社員たちを競争させるにはどうしたらいいか、と考えた末「歩数」となりました。9月から開始された山形市の健康ポイント事業「SUKSK」(スクスク)へも企業登録をしました。

 
【左:トラック車内に常備しているカロリーメイトと経口補水液】
【右:全車両及び建物内は禁煙としている】

【働き方改革関連】
●運行時間ロスを防ぐため、予め渋滞等の道路状況を考慮し、最大2時間の範囲で時差出勤を認めています。それを超える分は時間外となりますが、時間外手当が生活給になってしまっている部分がどうしてもあります。そうしなくてもいいような賃金体系にしたいと思いますが、そのためには荷待ち時間を減らすといった、取引先の理解や協力も必要になってきます。
●ドライバーが記入する運転日報をシステム化・データ化し、事務処理効率化を図っています。
●年間休日を平成29年に102日、30年には106日としました。さらに子どもが生まれる男性社員の出産時休暇を実施したり、年次有給休暇を1時間単位で取得できるようにしました。予定より早く戻ってきたので2時間早く帰るとか、朝夕に子供を病院に連れて行くとか、自由に使っているようです。

 
【左:電子黒板を利用し、配車担当者の事務を合理化】
【右:運転前には必ず血圧を計測し、風邪等の蔓延予防に非接触型体温計を活用】

取組みに際し、注意した点や苦労した点はありましたか。

様々ありますが、根本は社員の理解にあると思います。
例えばインフルエンザの予防接種ですが、社内での蔓延予防のため費用の半額の補助制度を開始しましたが、10%程度の接種率でした。全額補助にしてみても30%程度が現状で、予防への理解の輪を広げることが大切だと感じています。何かこれまでと違うことをするのは、誰でも抵抗があるようで、社員といえども、会社がどこまで個人に関与するか、また、強制することができるかも問題になりますし、家族の協力も必要かなと思います。
土日祝休みの企業も増え、当社の休日数も増えたとはいえ、トラックは365日運行が必要なので、休日出勤をしてもらわなければならないこともあります。
余談ですが、この時期だと吹奏楽の大会のため楽器を運ぶことがあるのですが、当社が楽器を運搬した学校がコンクールで優勝して、当社のトラックに山形陸運の「運」の字が書かれていたということで、縁起物として口コミで人気になったりしましたね。

取組みの結果、どの様な変化がありましたか。

有所見率(健康診断で異常所見のあった人の割合)は年々減少傾向ですし、これは継続していきたいです。
健康意識への確実な高まりは日常の会話からも実感しています。飲み物にしても甘いものを控えた方がいいとか、缶コーヒーばかり飲んでいた社員も最近はお茶がいいとか、考えが変化してきています。保健師さんの指導にも素直に向き合っています。また、健康ウォーキングでは各自の歩数が確実に増加しています。これからも安心して働ける支援と職場環境の整備に努めたいと考えています。
健康経営に関して、各メディアで取り上げられたり、講演依頼があったりと、社外からの関心も高く、評価を受けていると思いますし、健康経営に興味を持った人から求人の問い合わせも増えています。

今後の取組みについて教えてください。

【働き方改革関連】
荷物の積み下ろしの負担軽減のため、パワースーツの導入を検討していますが、もう少し値段が下がらないかと思っています。
ドライバー確保の取組みとして、以前から定年後の社員の再雇用を行っていましたが、現在は67歳まで雇用しています。ドライバーは通常の運転ができる限り、正社員で働き続けることができます。また、高卒者や女性ドライバーの雇用も進めたいと考えています。
事務部門では、家族の介護等による離職防止取組みとして、事務部門でテレワークができないかを検討しています。また、専門職という形ではなくて、経理であったり総務であったり、どちらもできるようにお互い共有し、休みの時は代務ができる体制を作っています。

【健康経営関連】
トラック協会などの補助制度も使いながら、脳梗塞や心筋梗塞予防の対策を進めたいと思っています。また、人の身体の入り口、歯が悪くなると全身が悪くなると言われていますので、歯周病対策も計画しています。

 
【インタビュー中の片山さん】       【事務室の椅子は腰への負担を軽減する仕様】
片山さんの趣味、関心のあることなど

ゴルフは営業にいた頃始めましたが、総務部に来てからはあまりやらなくなりましたね。
カメラ歴は長くて、ずっと一眼レフを使っていましたが、最近の携帯のカメラは自動で設定してきれいに映るので、優秀だとつくづく思います。
ビデオも子どもが生まれた頃から始めましたが、そのうち普通のビデオカメラでは物足りなくなって、業務用の機材を買うようになり、長女のマーチングの大会では、業者に間違われたこともありました。編集も独学で覚えて、今は社内のイベントなどの動画を撮ってYouTubeに投稿し、会社のホームページにも載せています。※
最近は、ドローン撮影に興味があって、上空から会社の全景とか、トラックが並んでいる光景を撮影してみたいですね。
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記事を見た方へのメッセージをお願いします。

社員を病気や労働災害から守り、毎日、明るく健康に働ける職場にすることが、健康経営の一番の目的だと考えています。「社員の安全を最優先に!無事に仕事を終えて、笑顔で帰宅!」が大前提です。社員は会社の一番の宝物であり、大切な資産。健康管理と健康維持は会社の責任であり使命と考えています。

 

 
2019年10月1日
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