「労働やまがた8月号」今月のひと

【福祉の仕事シリーズ】
公益社団法人山形県看護協会
山形県ナースセンター
田邊智絵さん

公益社団法人山形県看護協会山形県ナースセンター(以下、「ナースセンター」という。)では、看護職として働かれている方や復職を考えられている方などの悩みや不安の相談を行っています。この度は、看護師として働いた経験を活かしながら、ナースセンターで相談員として働いている田邊さんにお話しを伺いました。
【お仕事の内容について】

田邊さんのお仕事の内容について教えて下さい。

  主な仕事の内容としては、ナースセンターの事業全般と就業相談員として就業相談を行っております。ナースセンターを利用される方で、仕事を探される方はもちろんですが、看護職に就いている方の職場環境や、メンタル面での相談にも応じております。就業相談員としては、まもなく6年になります。

就業相談員として心掛けていることはどのようなことでしょうか。

  私自身も病院や大学の保健室で働いていた経験があり、同じ看護師として相談者の職場の悩みや3交代制勤務の悩みなどを共感することが出来ると思いますので、同じ立場だったということも伝えながら身近に感じてもらえるように心掛けています。
また、子育てと仕事の両立で悩んでいる方には、私も同じく子育て中であり、これまで自分が経験してきたことを伝えるようにもしています。
職場での悩みを抱えている方は、どこにも言えずにナースセンターへ来るということを理解し、ここを頼って来てくれたことに感謝をしながら、ゆっくりと時間をかけてお話しを聞くようにもしています。1回の相談だけでは話し足りない方や、同じことを繰り返し話す方は自分の中で整理が出来ていないこともありますので、整理をしながら丁寧に話しを聞くことも心掛けていることです。
 最近、ナースセンターは何でも相談が出来る場所と知ってもらえるようになったのか、メンタル面での相談も多くなっています。ですから私たちもメンタルサポートの研修会などにも参加し、どのような相談にも対応できるようにスキルアップに努めています。

主にどのような相談がありますか。

  子育て中の方からは、子どもが保育園の時間にしか働けない、または週に2、3日程度、午前中だけなど、様々な働き方の相談などがあります。また、お孫さんの世話をするために仕事を辞めたけれど、お孫さんが保育園に行くようになり仕事を再開したいなどの相談もあります。
現在は、病院や診療所も多様な働き方が出来るようになり、必ず3交代での勤務ということではなくなってきていますので、求職者と求人のマッチングが出来れば就業先の紹介が可能です。
私が病院を辞めた頃は、必ず3交代で勤務する必要があり、夜勤をやらないという選択肢はありませんでしたが、今はお子さんが小さいうちは夜勤免除で日勤の時間帯だけ働くなど、家庭と仕事を両立しながら働き続けられる取組みが出来てきています。保育園の休みの時や子どもが風邪やインフルエンザにかかって長期に休まなくてはいけない時に休みを配慮してくださる所もあります。
他には、子どもの保育園の申請や就労証明書の相談もあります。私の子どもも待機児童で保育園に入れなかった時期があり認可外保育のことにも詳しいので、お母さんと同じ目線でアドバイスが出来ると思います。
また、求職者の方以外に求人側の事業者からも求人票の書き方などの相談があります。高齢者施設が増えている中、どのように書いたら人材が集まるかなどの相談があり、看護師の人材確保に苦慮されていることを感じます。

男性からの相談もありますか。

  男性からの相談も増えています。男性の看護学生も増えていますので、男子学生からはどういう病院に就職したらいいのかなどの相談があります。以前、男性は精神科の病院で働くケースが多くありましたが、最近は保健師として保育園で働いたり、リハビリテーションの病院で働いたり、男性ならではの力を活かして活躍する方もいらっしゃるのでそのような例も伝えています。
男性の認定看護師も増えてきていますし、救急の現場やドクターヘリに乗っている方などは頼もしくカッコいいですね。

【ナースセンター 相談室】
看護師になるための学校や資格についての相談もありますか。

  社会人経験者の方や、どうしてもやりたかった看護師の仕事をしたいと子育てがひと段落した40代の方、また准看護師から正看護師になるための国家試験を目指したい方の相談などがあります。その場合は、受験科目が少ない社会人入学枠を設けている看護学校もありますし、奨学金など支援制度のある学校の情報を提供しています。

看護師として一生涯働けるようなサポートもあるのでしょうか。

  「再就業サポートガイダンス」を開催して退職後も働くことを推進しています。
病院は60歳で定年の所が多いですが、65歳までは嘱託職員として働けるような制度もありますし、介護福祉施設等の職員として70代で働いている方もいます。
長く看護師をして退職された方は、経験が豊富で観察力、洞察力も素晴らしいので、高齢者施設などは引き続き活躍出来る場所になっております。また、利用者の方と世代的に近いことで、同じ歌謡曲を知っていたり、昔話に花が咲いたりと利用者の方がいきいきと過ごせるような環境づくりでの役割もあるようです。

※「再就業サポートガイダンス」…病院等を退職するベテラン看護職が退職後もセカンドキャリアとして、専門知識や経験を活かして自身の生活スタイルに合わせて働くことができるようにするための説明会を開催しています。

Uターンの相談もありますか。

  UターンもIターンもあります。26年度ではUターンの問合せは382件あり、20代から60代の方まで幅広く相談がありました。
結婚や親の介護で地元に戻る方やご主人の転勤で来られた方、山形に引っ越して来た方など、山形県の病院の情報を求めていらっしゃいます。その時は、現在のお住いやこれまでの職務経験にマッチする病院を紹介したり、実際に見学に行っていただき職員の方と話をしていただく事もあります。
私も山形の学校を卒業した後は県外の病院に就職し、その後Uターンをして来ましたが、戻って来る時は、山形県内にどんな病院があるのか情報収集もしないで戻ってきたので、ナースセンターに来て県内の病院の数や病院訪問をして病院の内容を知りました。
今は県内のほとんどの病院を掲載しているガイドブックもあります。ガイドブックは、看護協会のホームページにも掲載しています。各病院の特色を載せて毎年更新していますので活用していただけると思います。

看護学生の県内定着率と求人倍率について教えて下さい。

  県内定着率は全国平均の約70%に比べ下回っています。看護学生には山形県に定着して欲しいですし、Uターンもして来て欲しいので、山形らしい「あったかい看護しませんか?」というポスターを作ってPRもしています。是非、戻って来て山形県で看護職として働いて欲しいですね。
求人倍率ですが、今は2倍を下回っています。以前は2倍を超えていました。求職者の方は様々な求人から自分にマッチする所を選ぶので、求人が多ければナースセンターの求職登録や相談が増えることもあります。求人がないのに登録や利用の推進をPR出来ないので、山形県医師会の方にもご理解をいただいてご協力をいただいています。

「看護学生フレッシュ説明会」や「ふれあい看護体験」などのイベントもありますね。

  看護学生に県内の病院を知った上で県内に定着してもらい、「私たちと一緒に看護師として働きましょう」というPRを看護協会とナースセンター全体で行っています。中・高校生や保護者の方も参加出来ますし、進路を決める前の早い段階から、看護職の職場として、病院以外にも役場や学校、保育園や幼稚園などでも働ける場所があることを知って欲しいですね。
 ふれあい看護体験では病院の見学や看護を体験してもらいますが、参加者からは「大変な仕事ではあったけどもやりがいがあった」「ありがとうと感謝されてうれしかった」などの感想があります。

※「看護学生フレッシュ説明会」…看護学生が就職活動前に山形県の各病院の求人担当者と面談し、看護内容・院内教育・採用条件などの説明を受けられます。

※「ふれあい看護体験」…毎年5月中旬?6月中旬まで病院・福祉施設等の見学や簡単な看護体験ができます。申込期間は2月ころで提出先は山形県看護協会です。

ハローワークでの相談会について教えて下さい。

  ハローワーク8カ所とマザーズジョブサポート山形と計9カ所で月に1回ずつ開催しています。26年度は年間で101回行いました。
庄内の方は山形のナースセンターまで足を運んでの相談がなかなか難しいと思います。電話では長く話がしずらい方もいますので、この相談会にはたくさんの方から利用いただいております。マザーズジョブサポート山形ではお子さんを預けている間に相談会に来る方もいらっしゃいます。

新しく始まる「看護職の離職時等の届出制度」とはどのような内容ですか。

  「看護師等の人材確保の促進に関する法律」の改正により、27年10月から看護職は、離職時に都道府県ナースセンターへ届け出ることが努力義務となります。この届出制度を活用することで、離職した看護職がナースセンターとつながりを持つことができ、就業に関する情報提供や相談などの支援を受けられるようになります。
 看護職の潜在化を予防し、効果的に復職支援につなげることや、離職後復職するか迷っている看護職に対し、適切なタイミングで効果的なアプローチをしていくことを目的としております。

「eナースセンター」について教えてください。

  求人・求職の登録は、NCCS(ナースセンターコンピューターシステム)といって、日本看護協会中央ナースセンターで一括管理されているシステムで、その機能をインターネット上で出来るようにしたものが「eナースセンター」です。システムは4?5年毎に更新しており、今年4月にリニューアルしました。
 4月からの新しいサービスとして、求職者はナースセンターを通さずに求人側の事業所とのやりとりが直接出来るようになりました。若い看護職からナースセンターを利用して欲しいという思いから、使い慣れているパソコンやスマートフォンのサイトからメールでのやりとりが可能になっています。ナースセンターを通さないことで時間もかかりませんし、直接やりとりをすることで気になっていることも確認することが出来ます。また、ご自分の希望条件を入力することで、週1回ご希望に合う施設等の情報がメールで届くシステムにもなりました。

看護職の離職時等の届出制度とeナースセンターのチラシはこちら

【ナースセンター 相談室】
【田邊さんご自身について】

看護師を目指したのはいつ頃でどのようなきっかけですか。

  同じような方はたくさんいらっしゃるかもしれませんが、小学生の時に保健委員をしていて、具合の悪い人がいると率先してお世話をする子どもでした。絆創膏も常に持っていて、先生も持ってきているのでしょうが、遠足にも必ず絆創膏を持って行くんですね。私の母が「絆創膏大好きだったわね」と話してました。医療器具や救急セットに触るのも好きだった記憶があります。
その後、中学校の頃は学校の先生になりたいと思ったこともありましたが、祖母から「知り合いの方が看護師になって凄く感謝されて、感謝されることが凄く嬉しいんだって」とずっと聞かされていたこともあり、進路を決める高校2年生の頃にこの祖母の話を思い出したこと、他には救命救急センターのドキュメンタリー番組を偶然見て「あっ、これだ。私がやりたい仕事だ」と思い看護師を目指しました。

田邊さんが感じる看護師の魅力を教えて下さい。

  看護師は患者さんと看護師、ご家族と看護師、医師と看護師等と人とのやりとりがほとんどですので、人と接することが好きな私にとってはそこが魅力でしょうか。人と接して常に関わっていたいし、話すことも大好きです。その中でお互いが学ぶことが多くあると思っています。

【インタビュー中の田邊さん】
なぜナースセンターの相談員として働かれようと思ったのでしょうか。

  最初は私もナースセンターの求職登録者で、病院を辞めてから結婚と出産を機に家庭に入り、3・4年ほど専業主婦で仕事から離れていました。その間も子育ての合間に仕事をしたい、収入に結び付かなくてもなにか看護職としてお手伝い出来ることがないかと思いナースセンターに相談に来ました。その時に紹介してもらった施設で働いていましたが、次の仕事を探している時にナースセンターの担当者から「ここは仕事と家庭のバランスがとれる職場だし、ここで新しいことにチャレンジするのもいいんじゃない」と背中を押してもらいナースセンターで働くことになりました。ナースセンターはみんなで看護職を応援してくれる場所だということが、求職者の立場だった私にも伝わりましたので、私もそういう応援出来る人になりたいと思いこの仕事に就きました。

田邊さんがやりがいを感じる時はどんな時ですか。

  何度か相談を担当していく上で、私のことを覚えて下さって、踏み込んだ話も聞かせていただくと信頼関係が出来てきたと感じます。そのような時にやりがいを感じます。また、ゆっくりだったけど就業につながった時や、病院の訪問時にナースセンターからの紹介の方が働き続けていることを聞くことも嬉しくやりがいにつながりますね。

看護職を目指す方や仕事を再開したいと考えている方にメッセージはありますか。

  私もそうでしたが、看護師になりたい、再就職したい時には細々とした悩みが多くあると思います。どんなことにも応えられるナースセンターを目指していますので、いつでもご相談に来て下さい。
悩みがあったらまずナースセンターへ、復職の時もナースセンターへ。

最後に田邊さんの今後の目標を教えてください。

  相談員としてどのような事例にも対応できるように、何に関しても動じず対応出来るように日々スキルアップが必要と思っています。そして、ナースセンターをちょっとした悩みでも相談出来る憩いの場にして、それを知っていただく為のPR方法を考えることもしていきたいと思っています。
「何でも相談出来る、あの人になら、あそこなら」という場所を目指して頑張ろうと思っています。

 
2015年8月1日